栄養失調とフレイルから高齢者を守る!その秘訣はたんぱく質にあり!

食事・栄養知識
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管理栄養士(RD)

【Point 1.】歳をとるにつれ、栄養失調やフレイルが問題になりやすい

【Point 2.】そのため、推奨されているたんぱく質の量を摂取することが大事!

【Point 3.】家族の健康を守るためにも、たんぱく質の多い食材を積極的に取り入れてみよう!

こんなご家族の変化はありませんか?

  • 最近、痩せてきた。
  • 昔に比べて食も細くなっている。
  • 足腰が弱くなり、あまり動きたがらない…。

年をとるにつれ、栄養失調やフレイル(虚弱した状態)になる可能性があり、その影響で病気になってしまったり死亡のリスクを高めたりすることがあります。

大切なご家族がこのような状態にならない為にも、しっかり予防することが大切です!

今回は栄養失調やフレイルの予防策の一つとして「たんぱく質の摂取」をおすすめします。

たんぱく質をしっかりとれていますか?

たんぱく質とは、筋肉を作るために必要なアミノ酸に代謝される栄養素です。

食事の時にたんぱく質をとると効果あり?」でもご紹介した通り、高たんぱく食には「身体の機能を改善しやすい」可能性が示されており、最近の高齢者のフレイル予防研究では、注目されている栄養素です。

また、推奨されているたんぱく質の量は、体重1kgあたり1.2g~1.5g/日とされており、「栄養失調とフレイルはとなり合わせ?」の記事でもご紹介しました。

体重45kgの高齢者の女性の方を例に上げてこの式を使い計算すると、

45 (kg) × 1.2 (g) ≒ 54 (g)

となり、一日に必要なたんぱく質量は約54gとなります。

しかし、推奨量は分かっても普段それくらいのたんぱく質を摂取できているのか分からないですよね…。

そこで、実際にわたしたちが普段口にしている食材や料理に含まれているたんぱく質の量を表にしました。

<食材の図(参考文献・参考資料1)>

可食部100gあたり

食品名エネルギー量(kcal)たんぱく質(g)脂質(g)
いわし13621.34.8
鮭(からふとます)15421.76.6
まぐろ(クロマグロ)12521.71.4
鶏もも肉25317.310.2
豚もも肉18320.510.2
牛もも肉16519.68.6
15112.310.3
牛乳673.33.8
豆腐564.93

<料理の図(参考文献・参考資料2)>

可食部100gあたり

料理名エネルギー量(kcal)たんぱく質(g)脂質(g)
ごはん(1膳)23140.6
ざるそば(1杯)28810.21.8
かけうどん(1杯)37012.45.2
サバの味噌煮(1皿)22915.18.1
茶碗蒸し(1皿)505.52.7
肉じゃが(1皿)3787.121

また、「体重45kgの方が推奨されているたんぱく質の量」を摂取するために、一日に必要な献立の例を以下に記載しました(参考文献・参考資料2)。

<朝食>
  • トースト・バター(1枚) 5.6g
  • 目玉焼き(1個) 6.4g
  • 牛乳(コップ1杯) 8.0g
<昼食>
  • かけうどん (1杯) 12.4g
  • ほうれん草のお浸し(小鉢1皿) 2.4g
<夕食>
  • ごはん(茶碗1杯) 4.6g
  • 豚肉の生姜焼き(1皿) 11.4g
  • 豆腐の味噌汁(茶碗1杯) 3.5g

これで目標量の約54gになります。いかがでしたか?

普段の食事は推奨されているたんぱく質の量に達していましたか?

栄養失調やフレイルを予防するには、このくらいのたんぱく質をとることが推奨されていますが、高齢とともに食が細くなり量を多く食べることが難しくなります。

加えて、たんぱく質は野菜などの植物性の食品よりも肉、魚、乳製品などの動物性の食品に多く含まれています。

動物性食品よりも植物性の食品を好む傾向にある高齢者の方には負担に感じることもあるかもしれません。

そこで、次はたんぱく質を効率よくとるためのポイントを2つにまとめてお伝えいたします!

上手にたんぱく質をとるポイント!

1つ目は「他の栄養素をうまく利用する」ことです。

実は、摂取したたんぱく質を利用するために必要な栄養素があります。

それが「ビタミンB6」。

ビタミンB6はたんぱく質をアミノ酸に代謝する上での中心的な存在です。そのため、摂取したたんぱく質を有効に使うために必要となります(参考文献・参考資料3,4)。

ビタミンB6を多く含む食材には “さんま、レバー、かつお、マグロ” 等、動物性の食品に多く含まれていますが、 “赤ピーマン、にんにく、バナナ” などの植物性にも含まれているので、ご家族が食べやすいものを取り入れてみてください。

また、 “玄米” にも含まれているので、主食のお米を白米から “玄米” に変えてみるのもおすすめです。

2つ目は「間食の時間を利用する」ことです。

間食とは、お菓子などを食べるおやつの時間というイメージがありますが、3食では補えない栄養素をとる時間に向いています。

足りない栄養は “おやつ” で補おう!」では平均年齢80歳以上の高齢者を対象に、たんぱく質を多く含んだ食品を間食として取り入れることで、栄養状態が改善する可能性があることをご紹介いたしました。

この時間を上手に使い、チーズ、牛乳、ゆで卵などの手軽にたんぱく質を多く含む食品をとることで1回の食事量を減り、負担を減らすことができます。

残りの人生を健康で繋げていく

今まで続けてきた食生活は大きく変えることは難しいですが、今できることを現在の食事に取り入れて少しずつ変えていくことが身体への変化に繋がります。

特に、高齢者の方は一度栄養失調やフレイルになってしまうと、元の健康状態に戻るのが難しくなります。

そのため、体力のある「今」だからこそ意識して、取り組むことがとても大事です。

ぜひ、大切なご家族の健康を守るためにも今回紹介した「たんぱく質」を今日の食事から少しでも多くいれる工夫をしてみてはいかがでしょうか?