眠らない国としても有名な日本ですが、睡眠不足がどのような健康被害を及ぼすのかご存じでしょうか?
また、日本は高齢化率世界1位でもあります(参考文献・参考資料①)。
はたして、高齢者が睡眠不足を継続している場合、高齢者に特異的な健康被害はあるのでしょうか?
今回は睡眠と健康に関連した様々な研究結果に基づいて、高齢者における睡眠と健康被害の関連、睡眠不足に陥らないための具体的な対策方法についてお伝えしていきます。
適切な睡眠時間が取れていないと死亡リスク、循環器疾患のリスクが高まる
一般的に睡眠不足が続くと、怠さや疲労感、集中力の低下、気分の落ち込みなどを感じやすいと言われています。
一方、一時的な症状の変化に注目されがちですが、これが長期的に続くとどのような影響があるのでしょうか?
睡眠不足と健康上の影響に関してこれまで実施された研究をまとめた調査によると、睡眠不足が、高血圧や糖尿病といった生活習慣病や心臓病のリスクを高めることに加え、死亡リスクを高める可能性が示されています(参考文献・参考資料②・③)。

睡眠不足による健康被害について具体的なメカニズムは不明な点が多いと言われています。
しかし、睡眠不足によりインスリン(血糖値を下げるホルモン)が効きづらくなることや消費エネルギー量の減少、食欲を増やすホルモンの増加、食欲を抑制するホルモンの減少等、何らかの代謝経路に悪影響を与えることからも生活習慣病を引き起こすのではないかと考えられています。
また、睡眠不足は交感神経系を刺激して、高血圧を引き起こすのではないかとも言われています。
これらのことを踏まえたうえで、高齢者が睡眠不足に陥っている場合、どのような健康被害があるのかを見ていきましょう。
高齢者において睡眠不足がある場合、フレイルを助長する可能性がある
では、高齢者の睡眠不足と健康被害においてはこれまでどのようなことが分かっているのでしょうか?
近年の日本の研究においては、『フレイル』との関連が示唆されています。
『フレイル』とは日本語で「虚弱・衰弱」を示す状態を指す概念であり、近年、高齢者特有の健診項目としてスクリーニングされることでも話題となっています。
高齢者が睡眠不足の場合、睡眠不足のない高齢者と比較して身体的・社会的なフレイルを助長しやすいことが明らかになっています(参考文献・参考資料④・⑤)。
まだ十分に運動ができていないと感じられる方はできることから少しずつ運動を始めていき、合わせて緑茶を摂取することで効果的な減量を目指してみてはいかがでしょうか?
運動や環境の調整から睡眠の質を高めていきましょう!
では、これまでの内容から生活上でどのような工夫をすれば睡眠の質を高められるのでしょうか?
一般的には下記の内容が推奨されています(参考文献・参考資料⑥・⑦)。
■ 一貫性を持たせること
週末も含め、同じ時間にベッドに入り、同じ時間に起床する。
■ 寝室を快適な室温に保ち静かに、暗く、リラックスしやすい環境にする。
■ スマートフォンやテレビなどの電子機器を寝室から出す。
■ 就寝前に大食いやカフェイン、アルコール摂取をしない。
■ 日中に活動する。
この記事では、上記の中でも運動に関してもう少し深掘りしてみたいと思います。
■ どのような運動がおすすめ?
健康のためにはどんな運動をすればいい?ーアメリカのガイドラインよりーでも紹介している筋力トレーニング、有酸素運動、ヨガなどの運動がこれまでの研究から睡眠の質を高めることが示唆されています(参考文献・参考資料⑧・⑨)。
■ どのくらいの強度が良いのか?
上記の内容において、中等強度の運動が望ましいことが近年の研究結果から示唆されています。
※中等強度運動の例
早歩き、水中ウォーキング、ガーデニング、ヨガ、スクワットやダンベルを使った筋トレ等
■ 朝と夜どちらが良いのか?
一般的には、夕方〜夜にかけての運動をすることが睡眠の質を高めると言われています。
これは、就寝時にかけて運動によって上昇した体温が低下することにより、入眠しやすくなることに起因すると言われています(参考文献・参考資料⑩・⑪)。
以上、睡眠と生活習慣病の関連、睡眠の質を高めるための工夫に関してご紹介させていただきました。
生活習慣を整えて睡眠の質の改善や、将来的な病気のリスクを減らしていきましょう!
【Point 1.】適切な睡眠時間が取れていないと死亡リスク、循環器疾患のリスクが高まる。
【Point 2.】高齢者においては適切な睡眠時間が取れていないことがフレイルのリスクを高める可能性がある。
【Point 3.】適度な運動や環境を整えて良い睡眠習慣を作っていこう!
参考文献・参考資料
- Arai H, et al. Japan as the front-runner of super-aged societies: Perspectives from medicine and medical care in Japan. Geriatr Gerontol Int. 2015 Jun;15(6):673-87.
- Itani O, et al. Short sleep duration and health outcomes: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Sleep Med. 2017 Apr;32:246-256.
- da Silva AA, et al. Sleep duration and mortality in the elderly: a systematic review with meta-analysis. BMJ Open. 2016 Feb 17;6(2):e008119.
- Nakakubo S, et al. Long and Short Sleep Duration and Physical Frailty in Community-Dwelling Older Adults. J Nutr Health Aging. 2018;22(9):1066-1071.
- Nakakubo S, et al. Association of sleep condition and social frailty in community-dwelling older people. Geriatr Gerontol Int. 2019 Sep;19(9):885-889.
- 厚生労働省:健康づくりのための睡眠指針2014 (2025年04月09日閲覧)
- CDC Sleep andSleep Disorders Tips for better sleep (2025年04月09日閲覧)
- Xie Y, et al. Effects of Exercise on Sleep Quality and Insomnia in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Front Psychiatry. 2021 Jun 7;12:664499.
- Wang, et al. The Effect of Physical Activity on Sleep Quality: A Systematic Review. Eur J Physiother. 2021 23 (1): 11–18.
- Seol J, et al. Effects of Morning Versus Evening Home-Based Exercise on Subjective and Objective Sleep Parameters in Older Adults: A Randomized Controlled Trial. J Geriatr Psychiatry Neurol. 2021 May;34(3):232-242.
- eヘルスネット 快眠と生活習慣(2024年12月16日閲覧)