【Point 1.】一般的に、高齢者は最大筋力と、力を素早く発揮する能力が低下していることが知られている。
【Point 2.】一方、数回しかできないくらい非常に重たい負荷で筋トレを行うことも、高齢者の健康には良い可能性が示されてきている。
【Point 3.】自身の身体の調子と相談しながらも、最大に近い負荷で運動することで、筋力を効率よく鍛えることに繋がるかもしれない。
高負荷な筋トレ
特に高齢者では、骨関節の負担や体力などの面から、思い立って高負荷な筋トレを行うことはなかなかできていなかったのではないでしょうか。
低負荷で高頻度の運動のほうが身体の負担が軽く、簡単に運動導入がしやすいため、筋トレの中でもよく用いられる手法となっております。
当サイトでは過去に「トレーニング量」という考え方をご紹介し、トレーニング量が同じであれば週1回でも週3回でも同程度の筋トレの効果が得られる可能性についてご紹介いたしました。
このトレーニング量とは、「回数×セット数×重さ」で換算されます。
では、重さ(負荷)が大きい方がより効果的な筋トレを行うことにつながるのでしょうか?
この疑問に対し、2025年の4月に Journal of Cahexia, Sarcopenia, and Muscle 誌から報告されたレビュー論文によると、高齢者においても高負荷な筋トレは安全で、様々なメリットがあることが紹介されています。
・筋力の増加
・神経系の様々な適応
・速筋線維(面積)の増加
・日常生活動作の回復
・転倒予防
・姿勢の安定
・ウォーキングなどの作業の効率化
上記のなかで、ご自身が良くしていきたいと感じるものはございましたか?
中には、何かしらの疾患を患っていても安全であることを示した報告も散見されるようです。
また、高齢者は「最大筋力」だけでなく、どれだけ素早く力を発揮できるかどうかを示す「最大筋発揮力」も低下することが言われています。
この筋発揮力の低下には、筋肉を素早く動かす「パワートレーニング」が有効である可能性もあるため、重い負荷を素早く動かすことも秘訣の1つになるかもしれません。
ただし、高強度の筋トレを始める際は自己判断で始めず、必ずお身体の状態や周囲の意見、専門家の意見を仰いでから行うのが望ましいでしょう。
例えば、心臓病を患っていらっしゃる方であれば、心臓への負担を軽減させるために、十分なウォーミングアップを行ってから高負荷な筋トレを行う必要があるかもしれません。
もともと腰や膝などに痛みを感じている方であれば、痛みが増悪しない範囲で徐々に負荷を上げていくことが望ましいでしょう。
そのうえで、ご自身で高負荷の筋トレを行う際は、報告の中から抜粋した、次の3点を心がけてください。
① 【負荷量】4回までしか持ち上げられない負荷(最大負荷の90%)であること
② 【安全性】遠心性収縮(筋肉を引き伸ばすように使うこと)から始めること
③ 【運動量】 ウォーミングアップのあとから4セット、3-4分の休憩を挟みながら行うこと
これらのポイントを心がけたうえで十分に行えない場合は、負荷を落とすか運動を中止すべきでしょう。
特に、遠心性収縮から運動を始めることで、きちんとした姿勢で運動を行えているかどうかを確認することが望ましいです。
例えば、きちんとした姿勢で行えないと余計な部分に力が入り(代償動作)、新たな痛みを誘発してしまう可能性もございます。
非常に重たい負荷をかけることになるので、身体の使い方ややり方(筋トレ用の機器の使い方)などは、正しく守ったうえで行う必要があります。
もし高強度の筋トレを行って見る場合は、ご自身の体力やお身体の痛み、その日の体調などと相談しながら、必要に応じて専門家と適宜相談しつつ、無理ない範囲で安全に行うようにしていきましょう。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2025 Apr;16(2):e13804
【筆頭著者】Tøien T
【タイトル】Heavy Strength Training in Older Adults: Implications for Health, Disease and Physical Performance.
【PMID: 40241440】



