【Point 1.】糖尿病患者では、生活習慣を改善して血糖値を下げることが望ましい
【Point 2.】優れた8つの研究をまとめた結果、筋力トレは血糖値を改善させることが明らかとなった
【Point 3.】血糖値をコントロールするためには、徐々に負荷を上げて筋トレを行うことが効果的かも
活習慣病のなかでも特に重要な病気のひとつが「糖尿病」
糖尿病(ここでは2型を指します)の原因には様々なものがありますが、主な原因として栄養バランスの偏った食事や運動不足や睡眠不足などの生活習慣によって起きるとされています。
病状が進行すると薬を飲む必要がありますが、発症の初期では普段の食事や運動など、生活習慣を改善していくことが第一となります。
今回ご紹介する報告では、生活習慣を改善する取り組みのひとつとして、定期的に筋力トレーニング(筋トレ)を行うと血糖値にどのような影響をもたらすのかを確かめてみました。
約15,000の論文から、優れた8つを採用
この報告では、多くの論文を用いて効果を検証する手法(メタ解析)を用いて、「糖尿病」や「筋トレ」に関する論文の検索を行いました。
検索の結果、全部で約15,000の論文が見つかり、さらに、その中から以下のような条件に合う論文を選別していきました。
- 60歳以上の糖尿病患者であること
- 筋力トレをしたグループとしなかったグループで結果を比較していること
- 筋トレをしたグループでは少なくとも8週間以上、筋トレする期間があったこと
この選別の結果、最終的に残った8つの研究をその後の解析に使用しました。
筋トレを行ったグループでは血糖値が低下した!!
8つの研究の結果をまとめたところ、血糖値の指標であるグリコヘモグロビン(HbA1c)が筋トレを行ったグループでより低下することが明らかとなりました。
なお、この結果は高負荷な運動(10回が限界のキツい運動)を行った際に効果的である可能性がありました。
糖尿病を持つ方の場合、このHbA1cを7.0%未満に抑えることが1つの目標となります(参考文献・参考資料1)。
従って、筋トレをしたグループでHbA1cの値が低下したことは、筋トレを行うことが血糖値のコントロールに有効であることが言えます。
しかし、この研究で得られた血糖コントロールの効果は比較的弱い可能性もあり、筆者らは薬などと組み合わせながら筋トレを行う事で、更に効果があるのではないかと述べています。
筋トレしたグループで筋力も改善
8つの研究のうち4つの研究では、筋トレの効果として筋力が改善するかどうかも確認しました。
その結果、筋トレを行ったグループではしなかったグループと比較して、筋力も改善しました。
週2-3回の運動が効果的?!
今回の報告から、糖尿病患者の血糖値をコントロールするには筋トレを行う事が効果的であることが示されました。
また、その運動の強度は高い方が効果がある可能性が示されました。
この結果をもとにまずは、ご自宅でできる簡単な運動から試してみてはいかがでしょうか。
その際、運動の負荷は無理のない範囲から始め、徐々に負荷を上げていくことをオススメします。
何をすれば良いか分からないという方は、階段の上り下りを意識的に行ってみてはいかがでしょうか。
単純ですが、階段の上り下りは足腰の運動に効果的です。
ただ、運動中に身体を痛めてしまった方は、無理をせず中断してください。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Diabetes Ther. 2017 Jun;8(3):459-473
【筆頭著者】Lee J
【タイトル】Resistance Training for Glycemic Control, Muscular Strength, and Lean Body Mass in Old Type 2 Diabetic Patients: A Meta-Analysis.
【PMID: 28382531】