近年話題の”フレイル”-高齢者施設での有病率は??-

フレイル
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理学療法士

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【Point 1.】フレイルは日本語で「虚弱」を意味し、様々な問題を抱えやすく、健康障害を招きやすい状態を指す

【Point 2.】過去に報告された論文を統合した結果、高齢者施設の利用者の約半数がフレイルな状態であった

【Point 3.】まずは自分や身の回りの人がフレイルな状態かどうか、簡単にチェックしてみよう!

※ この記事は2021年10月15日に一部リライトされました。

高齢者施設の利用者のうち、何割がフレイルなのでしょうか?

以前、当サイトでは、日本の高齢者におけるフレイルの有病率について紹介いたしました。

フレイルは、日本語で「虚弱、衰弱、老衰、脆弱」などと訳され、進行すると様々な病気になると言われています。

また、それだけではなく死亡のリスクが高くなる状態とも言わており、フレイルの進行を予防していくことがとても重要です。

近年では介護サービスが広く普及し、多くの方が高齢者施設を利用しています。

では、高齢者施設を利用している高齢者のうちどのくらいの頻度でフレイルな状態の人がいるのでしょうか?

今回は、高齢者施設でフレイルな状態にある人の割合を検証した報告をご紹介いたします。

過去に報告された論文を集めて検証

今回の検証では、過去に報告された論文を集め、結果をまとめる方法を用いました。

論文を集める作業では、60歳以上で高齢者施設を利用している人を対象としていることや、フレイルの有病率を計算するのに十分なデータがある報告をピックアップしました。

また、検索単語には、「高齢者施設」に関する用語と「フレイル」に関する用語を適宜用いました。

その結果、合計で1,792の論文がヒットし、上記の条件に当てはまることを確認しました。

最終的に9つの論文を解析に使用しました。

なお、この9つの論文は、世界各地から報告されたものであり、分析の対象となる施設には入居型や通所型のものがありました。

高齢者施設でのフレイル有病率は約5割!!

9つの論文(対象者の合計1,373名)を用いて解析を行った結果、高齢者施設の利用者のうち、フレイルな状態にある人の割合は52.3%なりました。

なお、論文の違いや個人差によるばらつきを加味した場合、低く見積もった場合で37.9%、高く見積もった場合では66.5%がフレイルな状態にあるという結果になりました。

以前ご紹介した「老衰や虚弱を指す言葉「フレイル」-実は身近な人もなっている??-」では、日本の地域に住む高齢者のうち7.4%の人がフレイルな状態でしたので、高齢者施設を利用している方々では、フレイルな状態にある人が多いことがうかがえます。

フレイル予備軍は約40%!

フレイルの予備軍と考えられている「プレフレイル」な状態にある人は、高齢者施設の40.2%に相当することが明らかとなりました。

筆者らは、将来的にプレフレイルな状態からフレイルな状態にならないように、予防していく必要があるだろうと述べています。

フレイルかどうかチェックしてみよう!

今回ご紹介した報告から、高齢者施設でフレイルな状態にある人の割合が約5割であることが分かりました。

今回は、入居型や通い型の施設を合わせた結果を報告しているため、実際の現場ではもう少し変動があるかもしれません。

また、今回の報告では、日本人を対象とした研究は含まれていません。

国ごとに介護制度には違いがあるので、結果が異なる可能性があることには注意が必要です。

フレイルの進行を予防するためにもまずは、フレイルかどうかを確認することが肝心です。

フレイルな状態かどうかを確認するには様々な方法がありますが、今回は以下の3つをご紹介します。

見た目やその場の状態からフレイルかどうかを判断する方法として、「Clinical Frailty Scale」参考文献・参考資料1,2)というものがあります。

この方法の利点は、非常に短時間で行うことができる点です。

また、対象者の状態を9段階に分類することができるため、簡単に重症なフレイルかどうかをチェックするのに役立ちます。

加えて、厚生労働省が推奨している「基本チェックリスト」も、フレイルな状態かどうかを判断するのにオススメです(参考文献・参考資料3)。

こちらは25項目からなる質問票で、フレイルの原因と言われている運動能力や心の健康などをチェックすることができます。

細かく確認したい場合や時間をしっかり確保できる場合などに使用してみてください。

なお、令和2年度からは後期高齢者(75歳以上)医療制度の健康診査、通称「フレイル健診」がスタートしました。

この他にもフレイルな状態か否かを確認する方法はたくさんあるので、是非、ご自身で調べたり試したりすると良いかもしれません。


ー紹介論文情報ー

【雑誌名】J Am Med Dir Assoc. 2015 Nov 1;16(11):940-5

【筆頭著者】Kojima G

【タイトル】Prevalence of Frailty in Nursing Homes: A Systematic Review and Meta-Analysis.

【PMID: 26255709