サルコペニアがあると脳神経の量が少なく、認知機能も低い?

サルコペニア
この記事は約7分で読めます。
”この記事を書いた人”

理学療法士(PT)

【Point 1.】サルコペニアは認知障害のリスクを高めると言われている

【Point 2.】サルコペニアがあると脳神経の量が少なく、記憶機能の低下とも関連する

【Point 3.】日々の運動と食事を見直すことで脳神経量や記憶機能を維持できる可能性があるかもしれない

サルコペニアが認知障害のリスクを高める?

サルコペニアというのは加齢に関連した低筋肉量に加えて、筋力および身体機能が低下している状態(参考文献・参考資料①)を指します。

これまでの研究からサルコペニアは認知障害のリスクを高めることが報告されています(参考文献・参考資料②)。

本サイトでも以前、サルコペニアと認知機能の関連についての記事を掲載しています。

また、体の筋肉の量が多いほど脳の容量も多いことが報告され(参考文献・参考資料③)、サルコペニアと脳の機能は密接に関連していることが考えられます。

今回ご紹介する研究では、特殊な解析を使用して脳の神経線維量を調べ、サルコペニア・認知機能の関連を検討しています。

女性入院患者のサルコペニアの有無、神経線維量、運動・認知機能を調査

対象者はリハビリテーション病院に入院した高齢女性患者40人としています。

入院中に次に示す4つの評価が実施され、①サルコペニアの有無による脳の部位別の神経線維量の違い、②サルコペニア患者の神経線維量と運動・認知機能との相関を検討しています。

各評価は以下の方法で実施されました。

■ サルコペニア:ヨーロッパのサルコペニアについてのワーキンググループの診断基準で定義
■ 神経線維量:トラクトグラフィーという特殊な解析方法を使用して、脳の神経線維を3次元的に評価
■ 運動機能:握力と歩行速度を評価
■ 記憶機能:Seoul Neuropsychological Screening Battery(SNSB)という評価の記憶項目を使用して記憶機能を評価

※トラクトグラフィー:脳内の評価に多く使用される核磁気共鳴画像(MRI)で撮像された画像を利用して、神経線維の走行を可視化ができるように描出したもの
※SNSB:注意、記憶、言語、視覚的機能、実行機能の5つの認知領域を包括的に評価できる検査(参考文献・参考資料④)。今回はその内の記憶に関する項目(即時記憶、遅延想起、言語・視覚的記憶機能)を使用

サルコペニアがあると脳の神経線維量が少ない!

本研究の結果から以下のことが明らかになりました。

■サルコペニアがあると、脳内の神経線維量が少ない
■神経線維量が少なくなる程、記憶機能と握力が低い

握力に関しては皮質脊髄路という力を発揮するための必要な神経路と関連していました。

記憶機能に関しては、運動機能ではなく認知機能に大きく影響を与える脳弓と帯状回という神経路との関連を認めました。

これらの結果から、サルコペニア患者の運動機能と認知機能の障害は、少なからず、脳内の神経路が減少することが関連していることが考えられます。

しかし、脳の神経線維量は歩行速度や全般的な認知機能には関連はありませんでした。

これらの理由としては握力は力を発揮するだけのシンプルな運動に対して、歩行動作は多くの神経線維が関連して遂行される動作であり、他の神経路が相互に関与している可能性が挙げられています。

全般的な認知機能も同様に他の神経路が影響している可能性が述べられています。

サルコペニア患者の神経線維量が少ない理由は?

サルコペニアがあると神経線維量が少なくなる理由として以下の事が論文で記載されています。

■ サルコペニアは動脈硬化の増加と関連しており、動脈硬化に伴う血圧上昇が脳の神経線維量を保つための微小な血管をを損傷してしまう
■ サルコペニアの要因の1つである活動量の低下が脳神経を保護・修復する力を低下させてしまう

これらの理由により神経線維量の減少を認め、記憶機能や身体機能に影響を与えたと考えられています。

このことから、動脈硬化や活動量の低下を予防するための行動が必要になってくることが考えられます。

神経線維を減少させないための方法は?

今回紹介した論文からは神経線維量を保つためにはサルコペニアを予防することが重要であると考えられます。

サルコペニアを予防する方法として以下の方法が挙げられます。

■定期的な運動
■高たんぱくな食生活
■デュアルタスク(運動+認知課題)

2017年に発行された本邦のサルコペニア診療ガイドラインによると、サルコペニアを予防するには定期的な運動、そして高たんぱくな食生活が大切だと記載されています(参考文献・参考資料①)。

以前の記事でもたんぱく質を摂取することの重要性が記されています。

さらに先行研究では高い活動量が軽度認知症や認知症のリスクを減らすことが明らかになっています(参考文献・参考資料⑤)。

また、デュアルタスクと言って運動にあわせて認知課題を行う事も認知機能に効果があると言われています(参考文献・参考資料⑥)。

例えば散歩をしながら、しりとりや歌を歌う等ですね。

本研究の結果から、「サルコペニア」は身体機能の事と捉われがちだが、認知機能などの脳の働きにも影響を与えることがわかるかと思います。

日々の運動・食事内容に注意しつつ過ごしていきましょう。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Am J Geriatr Psychiatry. 2019 Aug;27(8):774-782.

【筆頭著者】Kwak SY

【タイトル】Deterioration of Brain Neural Tracts in Elderly Women with Sarcopenia

【PMID:30981430


参考文献・参考資料

  1. サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント (2018年08月20日閲覧)
  2. Chang KV, Hsu TH, Wu WT, et al: Association between sarcope- nia and cognitive impairment: a systematic review and meta-anal- ysis. J Am Med Dir Assoc 2016; 17:1164.e7–1164.e15
  3. Burns JM, Johnson DK, Watts A, et al: Reduced lean mass in early Alzheimer disease and its association with brain atrophy. Arch Neurol 2010; 67:428–433
  4. Ahn HJ, Chin J, Park A, et al: Seoul Neuropsychological Screening Battery-dementia version (SNSB-D): a useful tool for assessing and monitoring cognitive impairments in dementia patients. J Korean Med Sci 2010; 25:1071–1076
  5. Llamas-Velasco S, et al. Physical Activity as Protective Factor against Dementia: A Prospective Population-Based Study (NEDICES). J Int Neurophychol Soc. 2015;21(10):861–7.
  6. Suzuki T, et al: A randomized controlled trial of multicomponent exercise in older adults with mild cognitive impairment. :PLoS One. 2013;8(4):e61483.