【Point 1.】長引く膝の痛みは関節症の可能性があり、放っておくとどんどん痛みが悪化するかもしれない
【Point 2.】変形性膝関節症が重症化すると膝の痛みが約50倍になるかも!?
【Point 3.】膝の痛みを和らげるためには「歳だから」と諦めずに、まずは行動することが大事
その膝の痛み、変形性膝関節症かも!?
前から時々膝が痛むことがあったけど、最近、膝の痛みが長引くなと思っている方。
もしかしたら、その膝の痛み、変形性膝関節症かもしれません。
変形性膝関節症(膝OA)は世界中に多くの患者がいる疾患の1つであり、主な症状は膝の痛み(膝痛)です。
膝OAは風邪のように自然治癒することはなく、徐々に症状は重症化します。
重症度はレントゲン画像から判断します。
重症化すると膝が変形していき、最終的には膝に人工関節を入れる手術をしなければいけない可能性があります。
本記事をご覧の皆様は「変形性膝関節症」という疾患をご存知で、重症になるにつれて膝痛も強くなることは想像できるかもしれません。
しかし、実際にどれくらい膝が変化するかはご存知でしょうか?
普段の生活で膝に痛みを感じるのはストレスに繋がるでしょう。
その対策を立てるためにも、膝OAによる膝痛がどのように変化するかを知っておくことは大切です。
今回は各国で行われた大規模研究からそれぞれの人種ごとに膝OAの重症度と日常的な膝痛の有無や強さの関連について検討した研究についてご紹介いたします。
今回の研究対象者の中には、日本人も含まれています。その結果を用いながら膝OAの膝痛が重症化とともにどのように変化するかをみていきましょう。
複数の研究データを検証
この研究は複数の大規模研究で得られたデータをもとに各人種ごとの膝OAの重症度と日常的な膝痛の有無や強さの関連を検討しています。
この研究に使用された大規模研究は5つであり、対象者は中国の都市部に住む人、中国の郊外に住む人、日本人、韓国人、白人、アフリカ系アメリカ人です。
今回使用する全ての研究において、膝OAの重症度はレントゲン画像をもとにKellgren and Lawrence分類(K/L分類)によって分類されています。
K/L分類は0-4までの5段階であり、以下のように分類されます(参考文献・参考資料1)。
- 0:None(所見なし)
- 1:Doubtful(疑わしい)
- 2:Minimal(軽度)
- 3:Moderate(中等度)
- 4:Severe(重度)
この研究では2以上を膝OAありとしています。
日常的な膝痛の有無については1ヶ月以上継続したかどうかを基準としており、膝痛の強さについては指標がそれぞれの研究により異なっていますが、筆者らがそれぞれを3段階に分けて解析をしています。
統計解析では膝OAがない場合を基準として、膝OAがある人はどれくらい日常的な膝痛を感じる人が多いのか、膝痛の強さはどれくらいかを膝OAの重症度別に検討してます。
日常的な膝痛について
まずは日常的に膝痛を感じる人数の結果をまとめます。
①軽度膝OAの場合
軽度の場合、日本人においては統計学的な差はありませんでした。
つまり、軽度膝 OAの方で日常的に疼痛を感じる人数は膝OAがない方が疼痛を感じる人数と変わらないという結果です。
②中等度もしくは重度の膝OAの場合(オッズ比)
- 都市部の中国人:16.8倍
- 郊外の中国人:9.4倍
- 日本人:24.2倍
- 韓国人:10倍
- 白人:15.8倍
- アフリカ系アメリカ人:8.5倍
日常的に膝痛を感じる人数に関して、日本人においては軽度の場合、膝OAの有無は関係しませんが、膝OAが悪化すると膝痛を日常的に感じるという人が多くなるようです。
膝痛の強さについて
次に膝痛の強さについての結果をまとめます。
①軽度膝OAの場合
膝痛の強さに関しても、日本人においては統計学的な差はありませんでした。
つまり、軽度膝 OAの方が感じる疼痛の強さは膝OAがない方が感じる疼痛の強さと変わらないという結果です。
②中等度もしくは重度の膝OAの場合(オッズ比)
- 都市部の中国人:14.9倍
- 郊外の中国人:9.1倍
- 日本人:54.7倍
- 国人:16.3倍
- 白人:15.3倍
- アフリカ系アメリカ人:5.9倍
膝痛の強さに関して、日本人においては軽度の場合、膝OAの有無は関係しませんが、膝OAが悪化すると膝痛も悪化するようです。
日常的に膝痛を感じる人数と合わせて考えると、膝痛を感じやすくなり、その膝痛の強さも強くなることから、膝OAの悪化は日常生活に大きな影響を与えそうです。
一歩踏み出して行動することが大事
今回の結果から、膝OAが悪化すると、より強い痛みを日常的に感じやすくなることが分かりました。
痛みの感じ方は人それぞれであるため、この結果がそのまま全ての方々に当てはまるとは言えませんが、膝OAが悪化すると痛みが強くなることが多いと思います。
膝痛がだんだん強くなってくると、膝を曲げ伸ばしすることや歩くことが大変になり、活動量が減ってきます。
特に、歩くことに関しては長い距離を歩きたくなくなると思います。
この状態が長く続くと足の筋肉が衰えて、日常生活に大きな影響を与えます。
このような状態になると、膝に人工関節を入れる手術を行うことが多いです。
手術をすると膝OAによる膝痛はなくなりますが、手術の後はやはり痛みがあり、リハビリも必要になります。
中でも、一番大変なのは経済的負担が増えることでしょう。
膝OAになった場合、自然に治ることはなく、徐々に悪くなっていきます。
しかし、膝痛を抑えることや重症化を遅らせることは可能です。
それらを早い時期から行うことで日常生活への影響を少なくし、手術を回避もしくは手術までの期間を延ばすことができるかもしれません。
膝痛がある場合は我慢せずに、もしくは「歳だから」と諦めずに病院を受診し、医師やリハビリの専門家に相談しましょう。
原因が分かれば膝痛に対する対策も立てられ、膝痛が減少する可能性もあります。
膝痛をそのままにせずに1歩踏み出して行動することが大事です。
この記事が膝痛を我慢していた人や「歳だから」と諦めていた人の日常生活の質が改善するため、もしくはこれ以上、日常生活の質を落とさないために行動するきっかけになればと思います。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Sci Rep. 2018 Jan 22;8(1):1364.
【筆頭著者】Wang K
【タイトル】Radiographic Knee Osteoarthritis and Knee Pain: Cross-sectional study from Five Different Racial/ Ethnic Populations
【PMID: 29358690】