「フレイル健診」が令和2年度からスタート!!-高齢者の特性とは??-

フレイル
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理学療法士

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【Point 1.】高齢者の特性(フレイル)を踏まえた健診が4月からスタートする

【Point 2.】健診先などで「後期高齢者の質問票」を使えば、フレイルかどうかをチェックできる!

【Point 3.】詳しくは保健所や自治体から配信される情報を確認してみよう

「フレイル健診」と呼ばれる保険事業が2020年4月からスタートします

参考文献・参考資料1

「フレイル」という言葉に馴染みのない方にとっては、何が始まるのかあまりピンと来ていない方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では「フレイル」とは何なのか、そして、75歳以上の後期高齢者を対象とした健診(通称:フレイル健診)に参加することのメリットはあるのかについてご紹介いたします。

また、この記事の後半では、実際に健診で使用される予定のチェックリストをご紹介いたします。

病院嫌いで普段は健診にも行かないような身内の方にも、ふとしたタイミングで確認できる項目があるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。

フレイルとは?

当サイトの「老衰や虚弱を指す言葉「フレイル」-実は身近な人もなっている??-」でもご紹介しておりますが、フレイルとは日本語で「虚弱・衰弱・老衰」などと訳され、歳を取るにつれて体力や回復力などが低下した状態のことを指します。

歳を取る以外にも食欲の低下や病気といった原因で、フレイルな状態に陥ってしまうこともあります。

この「フレイル」は、大きく分けて3つの分類に分けられます。

  • 身体的フレイル:筋力の衰えや筋肉量の減少など
  • 社会的フレイル:外に出る機会の減少、閉じこもりなど
  • 精神・心理的フレイル:記憶力の低下、抑うつ、やる気の低下など

このように、歳をとるにつれて生じてくる身体の変化はたくさんあります。

そのため、中年の人の生活と比べて、気をつけるべきポイントも異なってきます。

実際に、今回のフレイル健診では「壮年期における肥満対策に重点を置いた生活習慣病対策(特定保健指導等)から、体重や筋肉量の減少を主因とした低栄養や口腔機能、運動機能、認知機能の低下等のフレイルに着目した対策に徐々に転換することが必要である(原文ママ)。」と記載されています。

つまりこのガイドラインでは、歳を重ねていくことで中年の時期に行っていたような生活習慣病の対策から、フレイル対策へと徐々に転換していくための道筋を示しています。

では、この「フレイル健診」とはいったいどのような高齢者に対して行われるのでしょうか?

どんな人が対象なの?

先ほどお伝えしたように、高齢者は中年の人とは異なる健康課題(フレイル)をかかえていることが多く、高齢者に特有の課題を意識した対策が必要となります。

実際に今回改定されたガイドラインでは、「フレイル健診」を必要とするであろう方のイメージ像を4つに分類しています。

  1. 緊急・長期入院を含む高額医療が発生している高齢者
  2. 主に外来を中心とした在宅療養中の高齢者
  3. フレイルが顕在化しつつある虚弱な高齢者
  4. 医療をあまり利用しない元気な高齢者

1番上の「高額医療が発生している高齢者」は、再入院や入退院を繰り返してしまう状態を防いでいくことを目指しています。

2番目の「在宅療養中の高齢者」や3番目の「虚弱な高齢者」は、これ以上悪くならないように対策すること(重症化予防)が求められているでしょう。

4番目の「元気な高齢者」は健康的な生活を送るとともに、定期的に健診を行い、「フレイル」を早い段階で見つけていくことがカギとなりそうです。

一方で、「高齢者の中には、健診も医療も受診していない、または、医療中断などのため保険者でも健康状態を把握できない者がいる(原文ママ)。」との記載もあります。

そのうえで、このような人の状態を知り、医療などの適切なサービスにつないでいくことも大切であるとしています。

特に75歳以上の後期高齢者においては、血圧や血糖といった検査の目安を中年の人よりも緩めたり、年齢などを考慮したりするよう記載した学会ガイドラインが増えてきています。

つまり、フレイルであることを踏まえた病気の管理が必要となってきています。

フレイルは、高血圧や糖尿病を管理するよりも重要で複雑になってきたといっても過言ではないでしょう。

したがって、このガイドラインでは「今回の改定をきっかけに、一度健診を受けてみませんか?」といったニュアンスが込められているものと思われます。

もし、身の回りの方で通院がおっくうになって途中でやめてしまったり、一度も健診に行ったことがなかったりした方がいたら、フレイル予防の大切さを説明してみてあげてください。

併せて、次にお伝えする「後期高齢者の質問票」を紹介してみると良いかもしれません。

後期高齢者の質問票

今回改定されたガイドラインでは、「後期高齢者の質問票」というものが作成されました(詳細は「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン 別冊参考資料」をご参照下さい(参考文献・参考資料2))。

後期高齢者の質問票
(画像:(参考文献・参考資料2))より引用)

この質問票を作成した目的は、健康状態を把握し、把握した健康状態をもとに必要な支援へつなぐこととしています。

しかし、他の活用を制限するものではなく、以下のような場合でも使用することができるとしています。

  • 通いの場等において健康状態を評価する
  • 保健事業における事業前と事業後の変化
  • KDB(国保データベース)システム等にデータを収載する
  • 教育ツールとして活用し、被保険者にフィードバックする

注意すべき点は、「一般の方が使用できるもの」とは記載されていないことです。

今回の健診の対象となる75歳以上の後期高齢者はフレイルだけでなく、他にも様々な病気を患っていることが多いため、質問票の結果を解釈するのに専門的な知識が必要になる場合があるからでしょう。

一方でこの質問票を幅広く用いるには、当サイトで以前ご紹介した「家で非専門家のサポートを受けるのは効果ある??」のように、専門家ではない一般の方々の協力が不可欠であると思われます。

まずは身近な人のなかで、これらの項目の中でいくつか当てはまるような方がいないか、ご自身で確かめてみるのも良いかもしれません。

詳しくは最寄りの保健所や自治体からの情報を

今回は令和2年度から開始となる「フレイル健診」についてご紹介いたしました。

厚生労働省は今回ご紹介した保険事業の理解が住民の間で広がっていくことで、効果的な取組の土壌づくりにつながるのではないかとしています。

また、「高齢者の質問票」が広く用いられることで、関心層が増えていくことも期待できます。

健診に関する詳しい情報は、最寄りの保健所や自治体から配信されている情報をご確認下さい。