高齢者のフレイルー婚姻状況が大切?ー

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理学療法士

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【Point 1.】他人とのつながりは、フレイルの予防に大切であると考えられている

【Point 2.】未婚の方と比較して、既婚の方はフレイルの可能性が低いことが示された!

【Point 3.】未婚だとしても社会的な繋がりを維持することでフレイルから身を守ろう

フレイルに既婚/未婚は関係があるのだろうか?

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に合わせて、フレイルの予防として「人との関わり合い」の大切さが注目されています(参考文献・参考資料①)

感染予防対策として社会的な距離を保つ(ソーシャルディスタンス)ことが推奨されている一方、社会的な繋がりが欠如してしまうことによるフレイル発生リスクがあります。

社会的な繋がりといえば、友人との交流やボランティア活動などが注目されがちですが、パートナー(妻/夫)の存在といった家庭環境などはどうなのでしょうか。

パートナーがいることで、お互いの健康状態を確認したり、困ったときに助けを呼べたりと、様々な面で健康の促進につながる可能性もあるでしょう。

では、果たして、既婚/未婚でフレイルな状態に違いはあるのでしょうか?

婚姻状況だけでなく、社会的な繋がり全般を細かく調査

今回ご紹介する研究は、中国の健康調査の内容をもとに行われました(参考文献・参考資料②)

定期的に開催される健康調査のなかで、2011年、2013年、2015年の3時点で行ったアンケートに回答してもらった17,714 名を対象としました。

昨今、様々なフレイルの定義が提唱されているなかで、この研究では「Frail Index (FI)」という指標を用いてフレイルを定義しています。

FIは日常的な生活活動能力(ADL)や喫煙状況などの生活習慣、運動習慣、健康状態などの30~40項目(この研究では35項目)を包括した指標になります。

フレイルの多くは身体的だけでなく、社会的な状況や心理的/精神的な状況も関与すると考えられています。

高齢者は実に様々な病態や生活状況が想定されるので、このように幅広く評価が可能な指標が有用であると考えられているのです。

今回のキーポイントである婚姻状況は「既婚(同棲中、別居中)」と「未婚(離婚、死別、未婚)」に分けて調査いたしました。

そのうえで、フレイルと婚姻状況との関連を統計学的に検証いたしました。

加えて、婚姻状況がどのような社会的な繋がりに関係するのか、友人との交流や趣味活動、ボランティア活動などについても合わせて検証いたしました。

妻/夫 のいる日常が大切だと明らかに

解析の結果、婚姻状況はFIの点数と統計学的に関連していることが明らかとなりました。

具体的には未婚の方と比較して、既婚の方はフレイルの点数が低い(フレイルの程度が低い)ことが分かりました。

また、趣味のグループに参加する頻度が高い未婚の高齢者は,同じ頻度で趣味のグループに参加する既婚の高齢者よりも「趣味活動の頻度」と「身体的なフレイル」の関連が強いことが示されました(交互作用)。

つまり,未婚の高齢者の身体的フレイル予防の観点から考えると,趣味のグループに頻繁に参加することの効果は既婚の高齢者よりも大きいかもしれないということです。

未婚の高齢者には既婚の高齢者よりも社会的な繋がりが重要かもしれません。

社会的な繋がりはフレイルと関連!

友人との交流や趣味活動、ボランティア活動といった社会的な繋がりのある高齢者は、社会的な繋がりのない高齢者と比較してFIの点数が低いことが分かりました。

また、社会的な繋がりは身体的フレイルの減少とも関連していました。

これらの結果からも分かるように、できるだけ人との交流を行うことがフレイルの予防になる可能性が改めて示されました。

ドミノ倒しを未然に防ごう!

今回ご紹介した研究の結果から、既婚であるること、つまり普段の生活に際してパートナーのいる高齢者はフレイルの減少と関連していることが分かりました。

加えて、社会的な繋がりを保てている人ほどフレイルの可能性が低いことも示されました。

これらの結果から言えることは大きく2つあります。

■ パートナー(夫/妻)との生活を大切にしよう
■ 未婚だとしても社会的な繋がりを維持することでフレイルから身を守ろう

フレイルの始まりは社会的な繋がりの欠如からと考えられており、これが満たされていないとドミノ倒しのようにフレイルの負の連鎖が生じてしまう可能性があります。

上記の2つのうち、どちらかを達成しているだけでもフレイルに対する予防効果は大いにあるのではないかと思われます。

このような世の中が続いている今だからこそ、近くにいるご家族やご友人さんを大切にしていきたいですね。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】BMC Geriatr. 2021 Apr 15;21(1):248.

【筆頭著者】Yi Wang

【タイトル】Social engagement and physical frailty in later life: does marital status matter?

【PMID: 33858354