【Point 1.】コロナ禍における外出自粛等の影響で、全国的に高齢者の運動不足が懸念されている
【Point 2.】コロナ禍で活動量は約2/3に減り、ひとり暮らしで社会的な活動の少ない高齢者で減少の傾向は大きかった
【Point 3.】コロナ禍から得た教訓として、活動量を保つには特に人との繋がりが重要であることが再確認された
コロナ禍で活動量が減ってしまった高齢者は多いのでは?
「感染が怖いからデイサービスに行くのをやめた」
「いつも散歩するところは人混みがすごいから今は遠慮している」
「外出自粛と言われているのでずっと家にいる」
などと、新型コロナウイルス感染症の感染拡大(コロナ禍)に伴って、活動量が減ってしまった高齢者は多いのではないでしょうか?
運動不足はやがてフレイルな状態へと移り、最終的には介護を必要とするリスクが高まってしまいます。
コロナ禍を経験してから1年。
果たしてこの1年で、活動量やフレイルのリスクはどのように移り変わっていったのでしょうか。
高齢者を対象にオンラインにてアンケート調査
今回ご紹介する研究は65歳以上の高齢者を対象に、オンラインを用いて調査しました。
オンライン調査では、次の4時点におけるフレイルや活動量について質問指標のみを用いて確認しました。
■ コロナ前(2020年1月)
■ コロナ第1波(2020年4月)
■ コロナ第2波(2020年8月)
■ コロナ第3波(2021年1月)
フレイルかどうかの判定には、「基本チェックリスト」を用いました。
基本チェックリストは25項目からなる総合的な評価尺度で、特に介護予防の分野で広く用いられている質問指標です(参考文献・参考資料①)。
今回の研究では、2020年1月の段階で基本チェックリストにて「フレイル」と判定されなかった高齢者のみを解析の対象といたしました。
活動量の評価には、世界中で広く用いられている International Physical Activity Questionnaire (IPAQ) と呼ばれる質問指標を用いました。
そのうえで、2020年1月から2021年1月の間におけるフレイルの発生率や活動量の変化を調査しました。
やっぱり活動している時間は減っていた
調査開始時点でフレイルでなかった高齢者のうち、1年間調査を行えた方は937名(全体の77.3%)でした。
937名の活動量を調べたところ、コロナ前と比較してコロナ第1波では33.3%、第2波では28.3%、第3波では40.0%減少していることが分かりました。
この傾向は一人暮らしで社会的に活動していない高齢者で強く見られ、コロナ前に比べてコロナ第1波では42.9%、第2波では50.0%、第3波では61.9%減少していました。
(図:紹介文献情報の内容より編集部作成)
ここでいう「社会的に活動していない高齢者」とは、近所づきあいの程度で判断しております。
したがって、ひとり暮らしで近所づきあいの少ない高齢者は、活動量が減少しやすいことが示されました。
ひとり暮らし&社会的な活動の不足がフレイルのリスクになるかも
さらに、ひとり暮らしで社会的に活動していない(近所づきあいの少ない)高齢者は、フレイルになりやすい可能性があることが示されました。
具体的には、家族と住んでいて近所づきあいのある高齢者と比較して、ひとり暮らしで近所づきあいのない高齢者ではフレイルの割合(オッズ)が高くなることが分かりました。
ドミノ倒しになる前に
今回ご紹介した研究の結果から、コロナ禍における高齢者の活動量はコロナ前と比較して約2/3にまで減ってしまい、ひとり暮らしで社会的な活動の少ない高齢者でその傾向が強く見られました。
さらに、ひとり暮らしで社会的な活動の少ない高齢者では、フレイルな状態へ移行する可能性が高まることが示されました。
実際コロナ禍において、ひとり暮らしで社会的な活動の少ない高齢者は緊急事態宣言のあとも活動量の回復が遅くなってしまう可能性が指摘されています(参考文献・参考資料②)。
また、社会的なつながりの欠如はフレイルの始まりとも言われており、ここが崩れてしまうとドミノ倒しのようにフレイルの連鎖が生じてしまう可能性があります。
これらのことから、コロナ禍においてフレイルのドミノ倒しを未然に食い止めるためにも、特にひとり暮らしの高齢者において、社会的な活動を持つことの重要性が改めて確認されたと言えるでしょう。
感染対策を行い、趣味の活動や運動を継続できるように周りの人たちが支援していくことが大事になってくるかもしれませんね。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Nutr Health Aging. Published: 26 April 2021
【筆頭著者】Yamada M
【タイトル】The Influence of the COVID-19 Pandemic on Physical Activity and New Incidence of Frailty among Initially Non-Frail Older Adults in Japan: A Follow-Up Online Survey