【Point 1.】数ある疾患のなかでも「認知症にだけはなりたくない」という人は案外多い
【Point 2.】認知症の発症には、心肺機能が影響していることが分かった
【Point 3.】体力が衰えないよう、自身の生活習慣を見直して運動する機会を増やしてみては?
みなさんは認知症に対して、どのようなイメージを持っていますか?
もしかしたら、認知症になることに対して不安を感じる方もいるかもしれません。
認知症になる原因はいくつかあると言われていますが、ある程度予防することも可能だと考えられています。
そこで今回は、心肺機能と認知症との関連性に着目した報告をご紹介いたします。
最大酸素摂取量を確認し、約22年間追跡
この研究では、フィンランド東部に在住している男性2,031名(研究開始時の平均年齢52.8歳)が参加しました。
研究を始める段階で、参加者の最大酸素摂取量を測定しました。
これは以前ご紹介した「運動不足を改善すると体力だけでなく心臓の機能も改善する?!ー2年間の検証からー」などでも用いられている、信頼性の高い体力測定方法の1つです。
主にエルゴメータと呼ばれる自転車のような機械や、トレッドミルと呼ばれる歩くベルトコンベアーのような機械を用いて測定を行います。
一般的にトレッドミルの方が運動負荷が高いとされていますが、今回の研究ではエルゴメータを用いて測定を行いました。
その後、約22年の間に認知症を発症した人との関連性を調査しました。
低心肺機能で認知症発症リスクが最大1.95倍!!
平均22年間の追跡中に、208名(10.2%)の方が新たに認知症を発症しました。
解析の結果、最大酸素摂取量が多いと、認知症の発症リスクが低くなることが分かりました。
また、対象者を最大酸素摂取量の多い順に5つに均等に分類した際(5分位)、最も摂取量が少ない群は、最も摂取量が多い群と比較して認知症の発症リスクが1.95倍になることが明らかとなりました。
認知症にならないように今からできることは?
今回ご紹介した報告から、心肺機能が衰えていると認知症になりやすいことが明らかとなりました。
しかしながら、今回の報告では認知症に関連するすべての因子を調査したわけではありません。
また、この報告では心肺機能に着目していますが、普段の活動量などは考慮していませんので、結果の過大解釈に気をつけましょう。
平成27年に内閣府が行った世論調査によると、自分が認知症になった場合、実に約75%の人が「家族に身体的・精神的負担をかけるのではないか」という不安を感じているとの報告があります(参考文献・参考資料1)。
では、家族に負担をかけないようにするためにも、今からできる認知症の対策は何かあるのでしょうか?
認知症疾患診療ガイドライン2017(参考文献・参考資料2)では、認知症の危険因子として次のようなものを挙げています。
- 加齢や遺伝的危険因子(不可逆性因子)
- 糖尿病、脂質異常症、高血圧症、喫煙(血管性危険因子、生活習慣関連因子)
- メタボリック症候群、睡眠時無呼吸症候群、うつ病など(関連疾患)
また、定期的な運動や社会参加などは予防的に働くとしています。
つまり、認知症発症の原因であるタバコや過剰飲酒などの生活習慣などを整えつつ、体力をつけていくことがカギとなりそうです。
特に、今回ご紹介した対象者の平均年齢は50代前半の中年の方々です。
今回の結果をふまえて、仕事のない休日などを利用してランニングやジョギングなどの運動をしてみてはいかがでしょうか。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Age Ageing. 2018 Apr 28.
【筆頭著者】Kurl S
【タイトル】Cardiorespiratory fitness and risk of dementia: a prospective population-based cohort study.
【PMID: 29718064】