運動不足の高齢者は心臓の機能が悪い!?

運動知識
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【Point 1.】運動不足による健康被害は、若者でも高齢者でも大きな問題である

【Point 2.】長期間の定期的な運動は、加齢による心臓の衰えや体力の低下を緩和することが分かった

【Point 3.】若者に負けないくらい元気でいるためにも、運動を定期的に行っていこう!

近年、運動不足による健康被害が広く示されてきました

慢性的な運動不足は心臓病や生活習慣病の原因になる可能性があります。

当サイトでも、「座りすぎは心臓病・がん・糖尿病のリスク!?ー34の研究からー」「座りすぎは心臓病を早めるかも!」で、運動不足による健康被害の一部をご紹介してきました。

このように、運動不足と心臓の「病気」との関係性については分かってきましたが、心臓の「機能」とも果たして関連があるのでしょうか?

今回は週4回以上の運動を25年以上も続けた高齢者を対象に、この運動不足が心臓の「機能」にどのような影響を与えるのかをご紹介いたします。

心臓の機能をカテーテル検査で確認し、運動不足との関連を検証

この報告では、次に挙げる3つの集団を対象に実施しました。

  • 運動不足(運動習慣:週3回以下)な若者18名(平均年齢37歳)
  • 運動不足(運動習慣:週3回以下)な高齢者29名(平均年齢71歳)
  • 週4回以上の定期的な運動を25年以上続けていた高齢者26名(平均年齢68歳)

心臓の状態は、カテーテル検査にて確認しました。

カテーテル検査は、足の付け根や腕の動脈から細い管(カテーテル)を入れ、心臓の血管(冠動脈)の状態や心臓内の各部屋の大きさ、筋肉・弁の動き、圧力、不整脈の原因などを詳しく調べる検査方法です。

今回の報告ではこの検査を行って、4つある心臓の部屋のうち、全身に血液を送るのに最も重要な「左心室」の機能を確認しました。

今回の報告では心臓が収縮した際の左心室の大きさと、心臓が拡張した際の左心室の大きさを測定し、そのうえで、心臓が収縮/拡張した際の変化の割合などを調べました。

心臓
(図:心臓のイメージと4つの部屋)

また、対象者には体力測定を行ってもらい、最大酸素摂取量を測定しました。

体内で多くの酸素を使えていると酸素の摂取量が多くなるので、最大酸素摂取量は体力の指標としてよく用いられます。

定期的に運動していた高齢者は心臓の機能が保たれている!!

解析の結果、定期的に運動を行っていた高齢者では、運動不足の高齢者と比較して心臓の機能が保たれていることが分かりました。

この結果から運動には加齢によって低下していく心臓の機能を衰えにくくする効果があると考えられます。

運動不足の若者よりも高齢者の方が体力がある?!

また、今回の解析で、定期的な運動を行っていた高齢者は、運動不足な若者よりも酸素を摂取できる量が多く、体力があることが示されました。

この結果は、研究を始めた段階で時代背景の違いや健康に対する意識の違いなど、対象者の抽出方法によってバラつきが生じている可能性がありますが、少なくとも定期的に運動を続けていれば、しっかりと体力を維持できる可能性がありそうです。

心臓が縮まる能力と拡がる能力

今回の報告から、週に4日以上の運動を25年間という長い年月続けていると、心臓の機能を衰えにくくさせることができることと、若者と同じくらいの体力を維持できることが分かりました。

加齢によって心臓が衰える理由はいくつかありますが、なかでも心臓を包み込む膜にコラーゲンが沈着することで心不全の原因になることが知られています(参考文献・参考資料1)。

また詳細は割愛しますが、この報告では心臓が縮まる時の能力よりも、心臓が拡がる時の能力が重要な役割をしている可能性があることを明らかにしています。

この「心臓が拡がる時の能力」が衰えると、心不全などの原因になります(参考文献・参考資料2)。

以前、「運動量を増やすと心不全のリスクが下がる!!-6年間の調査から-」でもお伝えした通り、今まで運動する機会が少なかったとしても、これから運動を始めれば、心不全などの病気を予防できる可能性があります。

また、「運動不足を改善すると体力だけでなく心臓の機能も改善する?!ー2年間の検証からー」では、専門家と一緒に段階的に運動負荷を上げていくと、心臓の機能が改善することを報告しています。

この時、心臓の機能は今回の報告と同様、カテーテル検査を行って検証しています。

今回の結果から示されたように、若者に負けないくらい元気でいるためにも、定期的に運動を続けたほうがよさそうですね!


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Med Sci Sports Exerc. 2018 Mar;50(3):494-501.

【筆頭著者】Howden EJ

【タイトル】Effects of Sedentary Aging and Lifelong Exercise on Left Ventricular Systolic Function.

【PMID: 29077636