座りすぎは心臓病・がん・糖尿病のリスク!?ー34の研究からー

基礎知識
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理学療法士

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【Point 1.】座りすぎに伴う健康被害として、肩こりや腰痛などがある

【Point 2.】座っている時間が長いと、心臓病を患い寿命を縮める可能性が明らかとなった

【Point 3.】特に日本人は座っている時間が長いため、こまめに身体を動かしていこう

近年、「座りすぎ」による健康被害が重要視されてきています

特に長時間労働が問題視される日本では、多くの人が「座りすぎ」であることが予想されます。

また、日本は世界有数のIT大国であり、デスクワークを中心とした仕事が多いのが特徴です。

どうしても座っている時間が長いと、腰痛や肩こりなどの原因になると言われています。

その理由として、長い時間同じ姿勢でいることなどが影響していると考えられています。

一方で、運動不足だと心臓病などの健康被害を招くと言われていますが、果たして、長時間座っている人の場合でも心臓病などの健康被害を生じやすいのでしょうか?

そこで今回は、「座りすぎ」が心臓病やがん、糖尿病などの健康被害に及ぼす影響を調べた報告をご紹介いたします。

34本の研究をまとめて検証

過去に報告された論文を用いて、座りすぎが健康状態にどのような影響を及ぼすのかを検証しました。

あらゆる原因による死亡、心血管疾患やがんの発症や死亡ならびに糖尿病の発症といった健康被害との関連を調べた論文を収集した結果、合計で34の研究(対象者の合計:1,331,468名)が抽出されました。

なお、座りすぎの定義には、1日の座っている時間の総計、テレビを見ている時間、余暇で座っている時間を含みました。

また、座っている時間は、アンケート形式を用いた調査法や、加速度センサーを用いた方法を用いて調査しました。

座りすぎは寿命を縮める?!

解析の結果、座りすぎはそうでない人と比べて全死亡率や心血管疾患死亡、糖尿病の発症と関連していることが明らかとなりましたが、その差はわずかでした。

なお、この結果は1日当たり総計で6~8時間以上座っている時間があると、そのリスクが高くなる可能性がみられました。

一方で、がんに伴う死亡率との関連は見られませんでした。

テレビを見ている時間が長いのも危険?!

また、日中のテレビを見ている時間が長い人は、そうではない人と比べて全死亡率や心血管疾患死亡率が高いことが明らかとなりました。

この結果は、テレビを見る時間が1日当たり3~4時間を超えると、そのリスクが高くなる可能性がみられました。

本研究報告の限界点

今回の結果は、アンケートや加速度センサーを用いて座っている時間を調査しました。

したがって、調査結果から示された数値と実際の数値に違いがある可能性が考えられます。

例えば、ある研究では「読書をするために座っている時間」も座っている時間としてカウントしますが、アンケートなどでは、活動するために座っている時間を考慮できていない可能性があります。

このように、活動することを目的として座っている時間と、無目的に座っている時間を定義づけることは難しく、単純に人間の動きだけを計測する加速度センサーでは測定できないことが考えられます。

一方で、アンケートなどの評価は本人の主観による影響が大きく、実際の活動量よりも多く見積もってしまう可能性があります。

これらのことから、本研究では詳細な解析(サブグループ解析・感度分析)ができないことなどといった研究の限界が述べられています。

以上のように、今回ご紹介した論文で取り扱われた研究は、それぞれで研究の条件や結果に相違があり(異質性)、結果を解釈する際には注意する必要があります。

日本人が最も座っている時間が長い?!

今回は、座りすぎがその後の健康状態に及ぼす影響について調べた結果をご紹介しました。

その結果、座りすぎは心臓病や糖尿病の発症や死亡と関連することが明らかとなりました。

デスクワークが多くなってきた昨今において、座りすぎは社会的な問題といっても過言ではないでしょう。

特に日本は、世界20か国の中でも最も座っている時間が長いことが別の研究で明らかとなっています(参考文献・参考資料1)。

各国の座位時間
(参考文献・参考資料1)を元に執筆者ら作成

このことから、1日の中でどれだけ座っている時間を少なくするかが、今後の課題となりそうです。

以前ご紹介した「座りすぎは心臓病を早めるかも!」では、20-30分ごとに立って歩いたり、軽い体操を行うことが予防につながる可能性があるとして、ご紹介いたしました。

ご自身の中で目安を決めて、定期的に身体を動かすよう心がけてみましょう。

良い気分転換にもなるかもしれませんね!


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Eur J Epidemiol. 2018 Mar 28

【筆頭著者】Patterson R

【タイトル】Sedentary behaviour and risk of all-cause, cardiovascular and cancer mortality, and incident type 2 diabetes: a systematic review and dose response meta-analysis.

【PMID:29589226