メタボって肥満とどう違うの??-心血管疾患のリスクを調べた報告から-

基礎知識
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理学療法士

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【Point 1.】肥満症に代謝異常が加わると、メタボリックシンドローム(メタボ)と呼ばれる状態である

【Point 2.】肥満な人は将来メタボになりやすく、メタボの人は心血管疾患を患いやすいことが分かった

【Point 3.】気になったときがチャンス、普段の生活に小さな変化をつけてみよう!

ちまたでよく聞く「メタボリックシンドローム」

みなさんはメタボリックシンドローム(通称:メタボ)がただの肥満ではないことをご存じですか??

そうです。ただ太っているだけでは「メタボ」とは言わないのです。

実際には、太った人が高血圧症や脂質異常症といった代謝異常もきたしている場合を「メタボ」と呼びます。

この高血圧症や脂質異常症といった代謝異常は、俗に言う生活習慣病に当てはまり、心臓病になるリスクを高めると言われています。

では、ただ太っている場合とメタボにはどのような違いがあるのでしょうか。

肥満の有無と代謝異常の有無で群間比較

今回ご紹介する報告は Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA) と呼ばれる前向き研究から発表されました(参考文献・参考資料1)。

対象者はMESAに登録されている患者のうち、過去に心血管疾患を患ったことのない6,809名とし、そのうえで対象者を以下のように分類しました。

  • 肥満(-)&代謝異常(-)
  • 肥満(-)&代謝異常(+)
  • 肥満(+)&代謝異常(-)=単純な肥満
  • 肥満(+)&代謝異常(+)=メタボリックシンドローム

肥満はBMI (Body Mass Index) を用いて定義し、BMI≧30 kg/m2 以上を肥満としました。

代謝異常は次の5つのうち、3つ以上が当てはまった場合と定義しました。

  • 中性脂肪 高値
  • HDL-コレステロール 低値
  • 血圧 高値(高血圧)
  • 空腹時血糖 高値
  • 腹囲 高値

その後、4つの群に分類した対象者の経過を追い、心血管疾患の発症や死亡の有無を確認しました。

肥満な人は代謝異常をきたしやすい

解析の結果、体重が正常な対象者と比較して、代謝異常を持たない肥満な対象者は将来的にメタボリックシンドロームになりやすいことが明らかとなりました。

つまり、肥満な人は高血圧症や脂質異常症といった代謝異常を来たしやすいことが示されました。

メタボじゃないからといって油断はできない

代謝異常のない肥満者がその後も代謝異常を来たさなかった(メタボリックシンドロームにならなかった)場合、心血管疾患を発症する可能性はさほど高くならないことが分かりました。

一方、代謝異常のなかった肥満者が将来的に代謝異常をきたし、メタボリックシンドロームになった場合、心血管疾患を発症する可能性が上昇することが分かりました。

この結果から、たとえ現在メタボリックシンドロームになっていない人でも、将来的にメタボリックシンドロームになると心臓病になるリスクが高くなる可能性が示されました。

メタボになる前が勝負かも

今回ご紹介した報告から、太っている人は将来的にメタボリックシンドロームになりやすく、メタボリックシンドロームの人は心血管疾患を患いやすいことが改めて分かりました。

健康診断で高血圧症や糖尿病といった代謝異常を指摘されていない方にとっては、今後も代謝異常を指摘されないよう、日々の運動や食生活の見直しなどを心がけると良さそうですね。

厚生労働省の情報提供サイトでは、メタボリックシンドロームを防ぐために以下の3つを習慣にする事が良いと述べています(参考文献・参考資料2)。

  • 日常生活の中で身体活動を積極的に行う
  • 歩くなどの軽い運動を続ける
  • 筋肉を鍛える運動をとり入れる

何かを感じた時がチャンスです。小さな動機が、きっとその後の健康を大きく変えてくれるでしょう。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】J Am Coll Cardiol. 2018 May 1;71(17):1857-1865.

【筆頭著者】Mongraw-Chaffin M

【タイトル】Metabolically Healthy Obesity, Transition to Metabolic Syndrome, and Cardiovascular Risk.

【PMID: 29699611