食事の時に蛋白質をしっかり摂ると効果あり?!

食事・栄養知識
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理学療法士

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【Point 1.】タンパク質は筋肉を作る必須な栄養素であり、食事毎に十部な量を摂取することが大切である

【Point 2.】低カロリー高タンパクな食事を半年続けると、肥満な方の身体機能が良くなった

【Point 3.】筋肉の量を増やして身体機能を良くするためには、食事にも気をつけていこう!

今、高タンパクな食事が注目されています

肥満は様々な病気のリスクや運動機能の低下の原因となっています。

「栄養管理をしている肥満な高齢者には有酸素運動or筋トレのどっちが効果的?」でもご紹介したように、近年、肥満の改善を目的に運動や栄養に着目した論文が多く報告されています。

なかでも、タンパク質は筋肉を作るために必須な栄養素です。

タンパク質は体内でアミノ酸に分解・合成され、このアミノ酸が筋肉の元となります。

特に、体内では合成できない、または合成速度が遅いため、食物から摂取する必要のあるアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。

この必須アミノ酸は、高タンパクな食品に多く含まれていると言われています。

では、肥満の改善を目的に低カロリー高タンパクな食事を続けていれば、筋肉の量や身体機能はどうなるのでしょうか?

フレイルかつ肥満な高齢者に低カロリー高タンパク食を

今回ご紹介する報告は半年間、60歳以上の高齢者67名を対象に食生活を管理した場合の効果について検証を行いました。

この対象者は、体格の目安となる BMI (Body Mass Index) が30 kg/m2 以上 の方に限定しました。

以前ご紹介した「健康的な体格って??ーイギリス360万人からの報告ー」では、BMIが30 kg/m2 を超えると平均寿命が短いことをお伝えしました。

したがって、今回の対象者は早死にするリスクが高い方々と考えることができるでしょう。

またこの報告では、フレイルな状態だと判定された高齢者に限定して研究が行われました。

ここでのフレイルの定義は身体機能テスト(Short Physical Performance Battery: SPPB)を用いました。

この身体機能テストは筋力、歩行能力、バランス能力を複合した評価バッテリーで、12点満点で評価されます。

この報告では4-10点の範囲を「フレイルな状態」と定義し、4点未満の方と11点以上の方は対象から除外して解析を行いました。

その上で、対象者をランダムに毎食30 g 以上のタンパク質を摂取する群(高タンパク摂取群)とタンパク質の摂取量を特に定めない群(コントロール群)に分類し、6ヶ月間決められた食事を続けてもらいました。

なお、食事は普段食べている食事よりも低いカロリーに制限して提供しました。

さらに、6ヶ月間で10%体重を減らすことを目標に体重を毎週測定して体重管理を行いました。

どちらの群もしっかり体重は落とせた!

6ヶ月間低カロリー食を続けたことで、体重は有意に減少することが明らかとなりました(高タンパク摂取群で平均-8,7 kg、コントロール群で平均-7.5 kg)。

この結果は、高タンパク摂取群とコントロール群で差はありませんでした。

身体機能テストは高タンパク摂取群の方が改善が大きい

研究を始めた段階と研究を初めて6ヶ月の時点での身体機能テストの結果を見たところ、高タンパク摂取群、コントロール群ともにテストの結果が有意に向上していることが明らかとなりました。

さらに、高タンパク摂取群とコントロール群で比較したところ、高タンパク摂取群にて6ヶ月後の身体機能テストが有意に改善していることが明らかとなりました。

つまり、高タンパク食を毎食摂取することで、身体機能が改善しやすい可能性が示されました。

本当に食事だけで変わるの?!

今回ご紹介した報告から、毎食高タンパクな食事を続けていれば、身体機能が改善しやすい可能性が示されました。

ここで注意していただきたいポイントとして、今回の報告はパイロット研究と呼ばれる研究デザインであることが挙げられます。

パイロット研究は研究の初期段階で行われるもので、研究計画が適切か否かを確認したり、修正の必要の有無、治療効果が適切に得られるかどうかを調べる手法です。

実際の研究の途中で行われることも多く、簡単に述べると「中間報告」といった役割を持ちます。

したがって、今回の報告もさらに研究を進めていくことで、新たな結果が見えてくるかもしれません。

「栄養管理をしている肥満な高齢者には有酸素運動or筋トレのどっちが効果的?」でもご紹介しましたが、カロリー摂取量を制限しても身体機能は改善する可能性があります。

また、タンパク質の摂取量を増やすことで身体機能が改善しやすいことも言われてきていますので、どのような食事のバランスが良いのか、今後の研究に注目したいところですね。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2016 Oct;71(10):1369-75.

【筆頭著者】Porter Starr KN

【タイトル】Improved Function With Enhanced Protein Intake per Meal: A Pilot Study of Weight Reduction in Frail, Obese Older Adults.

【PMID: 26786203