あなたの身の回りにもサルコペニアが潜んでいる!?ー最新の報告からー

サルコペニア
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理学療法士

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【Point 1.】サルコペニアは主に、加齢に伴う筋肉量の減少や様々な運動機能障害の原因になると考えられている

【Point 2.】サルコペニアの有病率は、定義によってバラツキが生じることが分かった

【Point 3.】握力はサルコペニアの目安の1つなので、一度確認してみても良いかもしれない

以前、当サイトではサルコペニアの有病率についてご紹介いたしました

人間誰しも、年をとると筋肉の量が減ったり歩くのが遅くなったりしていくものです。

このように年をとるにつれて筋肉量が減少していく加齢性疾患のひとつにサルコペニアがあります。

もしかしたら、年齢を重ねて行くにつれ、あなたの身の回りの知り合いの中にもサルコペニアを有している方がいるかもしれません。

今回は、2018年の7月に紹介された報告についてご紹介したいと思います。

109もの論文、8つある定義からサルコペニアの有病率を算出

この報告は、以前に英語で報告された論文をまとめることで、数多くの結果を統合する手法を用いて研究が行われました。

まず、過去にサルコペニアの有病率について検証した報告を検索しました。

この際、数あるサルコペニアの定義のなかから、世界的に広く用いられている8つの定義を用いた報告のみに絞って検索を行いました。

その上で、2人の研究者によって文献の内容を確認し、下記に記した基準を満たした論文を選択していきました。

  • 筋肉量、筋力、運動機能を用いてサルコペニアを定義しているもの
  • 年齢や性別別に有病率を検証しているもの
  • 全身の筋肉量を測定しているもの

その結果、合計13,191本の論文がヒットしました。

その上で、若い対象者を含んだ論文や、検索結果が重複した論文などを除き、最終的に109もの論文を用いてその後の解析を行いました。

定義によってばらつきがある??

109の論文のうち、最も多く使用された定義はヨーロッパのサルコペニア診断基準(EWGSOP)、もしくはアジアのサルコペニア診断基準(AWGS)でした(合計対象者数:58,283名)。

この基準を用いた場合、推定値ではありますが、サルコペニアの有病率は12.9%となりました。

この推定値には多少の幅があり、少なくて9.9%、多くて15.9%という結果になりました。

ちなみに、この診断基準は、筋肉量の減少と筋力または運動機能の低下を元にサルコペニアを判定しています。

しかし、この解析では年齢や性別、人種などといった対象者の違いが考慮されていません。

結果が偏っている可能性 (異質性) があるので、結果を解釈する際は十分に注意しましょう。

また、他の報告では筋肉量のみを用いてサルコペニアを定義しており、その有病率は40.4%でした。

上記の結果と比べてみると、研究ごとに、サルコペニアの評価が統一できていない可能性が考えられます。

なお、この結果から筆者らは、サルコペニアの定義や診断基準を更に発展させ、洗練する必要があると述べています。

これについて最近では、「サルコペニアの新たな定義と指標!ーヨーロッパからの最新の報告ー」でご紹介したように、2018年の10月にヨーロッパからサルコペニアの新たな診断基準が発表されました。

握力計で握力を測ってみよう!!

サルコペニアの診断の多くは、上記でもご紹介したヨーロッパのサルコペニア診断基準(EWGSOP)とアジアのサルコペニア診断基準(AWGS)が用いられます。

今回ご紹介した報告の内、それらの診断基準に乗っ取ってサルコペニアの有病率を判断したところ、約13%であることがわかりました。

一方で、サルコペニアの判定にはバラツキがある可能性が示されました。

ただし、今回用いられた診断基準では筋肉量の減少や筋力の減少、運動機能の低下などを用いていましたが、実際に加齢に伴って筋肉の量が減っているのかを判断するには、未だ不明な点が残っています。

今回の結果から、何を用いてサルコペニアと判断しているのかをしっかりと把握することが大切だと言えるでしょう。

以前ご紹介した「知っておくと便利な言葉”サルコペニア”ー実はあなたも発症中?ー」では、サルコペニアの簡単な確認方法として指輪っかテストをご紹介しました。

この方法は簡易的ではありますが、全身の筋肉のうち一部しか捉えていないという欠点があります。

実際に、今回ご紹介した報告では、身体の特定の部位(太ももや舌など)を用いて筋肉の量を推定した報告は除外し検証を行っております。

この方法は簡易的ではありますが、全身の筋肉のうち一部しか捉えていないという欠点があります。

実際に、今回ご紹介した報告では、身体の特定の部位(太ももや舌など)を用いて筋肉の量を推定した報告は除外し検証を行っております。

今回ご紹介した報告の中で、最も広く用いられていた診断基準はEWGSOPやAWGSでした。

特に、AWGSはアジア人を対象とした基準となっています。

AWGSでは、筋力の指標として握力が男性で26kg、女性で18kgをサルコペニアの基準の1つにしています(参考文献・参考資料1)。

握力は全身の筋力のうち腕の筋力の一部しか反映していませんが、サルコペニアか否かを確認する1つの目安となります。

一度計測してみてはいかがでしょうか?


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Age Ageing. 2018 Jul 25.

【筆頭著者】Mayhew AJ

【タイトル】The prevalence of sarcopenia in community-dwelling older adults, an exploration of differences between studies and within definitions: a systematic review and meta-analyses.

【PMID: 30052707