健康的なダイエットとして最適な方法とは? ー 有酸素運動と筋トレの併用の効果 ー

基礎知識
この記事は約6分で読めます。

”この記事を書いた人”

理学療法士(PT)

【Point 1.】ダイエットは体重減少とともに筋肉量も減少しやすい

【Point 2.】有酸素運動と筋トレの併用は、ダイエット中の筋肉量減少を抑えつつ、身体機能・心肺機能を向上させることが示唆された

【Point 3.】食事制限だけでなく、有酸素運動と筋トレを併用することで健康的にダイエットできるかもしれない

健康のためのダイエットはどのようにすべきでしょうか?

健康管理の重要性が広がり、テレビ番組やSNSで様々なダイエット方法が紹介されているのを目にします。

しかし、食事制限だけのダイエットでは、体重減少とともに筋肉量の減少を招く可能性があります。

この筋肉量の減少はサルコペニアの発症に大きく関わっています。

そのようなダイエットは本当に健康のためと言えるでしょうか?

一方、有酸素運動や筋トレは、ダイエットと併用することで、筋肉量の減少を軽減できることが報告されています。

では、筋肉を落とさずダイエットをするためには、有酸素運動と筋トレのどちらが効果的なのでしょうか?また、二つを併用した場合の効果はどうなるでしょうか?

今回ご紹介する研究では、食事制限ダイエットに伴う筋肉量減少に対する有酸素運動と筋トレ、またそれらの併用による効果を検討しています。

65歳以上の肥満高齢者を対象に効果を検証

この研究は、アメリカで実施されたLifestyle Intervention Trial in Obese Elderly(LITOE)試験の結果をサブ解析して検証しています。

LITOE試験に関しては以下の記事でご紹介しているのでご参照ください。

LITOE試験に参加した65歳以上の肥満高齢者160名の対象者をランダムに以下の4群に分けました。

なお、この研究は筋細胞と遺伝子解析を行うことができた47名が最終解析対象となっています。

以下に4群の介入方法と内訳を表記しています。

■ 食事制限も運動も行わない群(コントロール群):12名
■ 食事制限と有酸素運動を行う群(有酸素運動群):11名
■ 食事制限と筋トレを行う群(筋トレ群):12名
■ 食事制限と有酸素運動、筋トレの併用を行う群(併用群):12名

食事制限は、1日あたりの摂取カロリーを500〜700 kcal減少させるという手法を用いており、毎日体重1kgあたり1gのタンパク質を摂取できるバランスの良い食事を取るように調整されています。

例えば、普段1日あたり2200 kcal 程度の食事を摂っていた方は、1500〜1700 kcal に食事を制限されました。

運動は週3回で、有酸素運動群と筋トレ群は1回60分の運動を実施し、併用群は有酸素運動と筋トレを合わせて75〜90分を実施しています。

介入期間は6か月間で、介入前と介入6カ月後の身体機能、心肺機能、筋肉量、筋タンパク合成効率、細胞の遺伝子発現を調べています。

有酸素運動と筋トレの併用は、筋肉量減少を抑制しつつ、その他の機能も向上!

6か月の介入期間で、食事制限だけのコントロール群は体重減少せず、運動を行った有酸素運動群、筋トレ群、併用群ともに約9%の体重減少に成功しました。

評価項目に関する各群の比較結果を以下にまとめます。

■ 身体機能向上:コントロール群<有酸素運動群,筋トレ群<併用群
■ 心肺機能向上:コントロール群,筋トレ群<有酸素運動群,併用群
■ 筋肉量減少:コントロール群<筋トレ群,併用群,<有酸素運動群
■ 脂肪量減少:コントロール群<有酸素運動群,筋トレ群, 併用群
■ 筋力向上:コントロール群,有酸素運動群<筋トレ群,併用群

3つの運動群の中では有酸素運動群が筋トレ群と併用群よりも筋肉量が減少するようです。

一方で、併用群は体重減少に伴う筋肉量の減少を抑えつつ、それぞれ有酸素運動群と筋トレ群よりも身体機能、筋トレ群よりも心肺機能、有酸素運動群よりも筋力が向上する結果となりました。

筋タンパク合成や細胞、遺伝子レベルでの効果は??

筋肉内のタンパク合成効率は、筋トレをしないコントロール群と有酸素運動群よりも、筋トレをする筋トレ群と併用群で増加していました。

さらに、筋細胞の成長や再生に関与する遺伝子発現は、有酸素運動群よりも筋トレ群、併用群でより高く発現していることが確認されました。

そのため、ダイエットによる筋肉量減少を抑えるためには、筋トレを含む運動を行うことが必要であることが示唆されます。

一方で、有酸素運動群では筋トレ群と併用群よりもミトコンドリアの生合成や融合、分解に関与する遺伝子発現およびコハク酸の増加が確認されました。

ミトコンドリアはエネルギー代謝の重要な役割を担っており、脂肪酸やアミノ酸が分解される代謝の過程でコハク酸が増加します。

(図:ミトコンドリアからコハク酸が生成される概念図)

つまり、コハク酸の増加はエネルギー代謝の増加を示していると考えられます。

これらのことから、有酸素運動は心肺機能向上に効果的ですが、ミトコンドリアの活性化を促進し、エネルギー代謝の亢進による筋肉量の減少を誘発してしまう可能性があることが示唆されました。

有酸素運動と筋トレの併用で健康的なダイエットを

今回の研究では、食事制限ダイエットの体重減少に伴う筋肉量の減少を抑制するためには、筋トレもしくは筋トレと有酸素運動の併用が有用でした。

しかしながら、この研究では、食事制限のみの群がなく、食事制限による体重減少に伴う筋肉量減少と運動の効果を比較していません。

そのため、有酸素運動は食事制限のみの場合よりも筋肉量の減少を抑制する可能性もあります。

有酸素運動と筋トレの併用は、筋トレだけでは生じない心肺機能の向上と、有酸素運動だけでは生じない筋力の向上といった多面的な効果をもたらします。

過去の報告では、高い筋力と高い心肺機能は心臓病になるリスクの軽減と関連することが報告されています(参考文献・参考資料①)。

運動の効果や目安とする運動強度に関しては以下の記事で詳しくご紹介しているので、是非ご参考ください。

間違ったダイエットで、逆に健康を害してしまうこともあります。

今回ご紹介した報告をもとに有酸素運動と筋トレを取り入れて、健康的なダイエットを目指しましょう。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Cell Metab.

【筆頭著者】Georgia Colleluori

【タイトル】Aerobic plus Resistance Exercise in Obese Older Adults Improves Muscle Protein Synthesis and Preserves Myocellular Quality Despite Calorie Restriction

【PMID: 31279675


参考文献・参考資料

  1. Andersen K, et al. Exercise capacity and muscle strength and risk of vascular disease and arrhythmia in 1.1 million young Swedish men: cohort study. BMJ. 2015 Sep 16;351:h4543.