運動量の違いは年と共に変化する筋肉の質の変化に影響する!?ー4年間の追跡結果ー

基礎知識
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”この記事を書いた人”

理学療法士(PT)/修士(保健科学)

【Point 1.】筋肉の量を増やすだけでなく、「筋肉の質」を保つことが重要!?

【Point 2.】4年後の「筋肉の質」は運動量によって異なることが分かった

【Point 3.】自分の体の状態に合わせて運動量を増やし、筋肉の質を上げていこう!

筋肉の質は運動量によって変化するの?

最近は健康意識の高まりから、日常的に運動をする人も増え、運動に関する知識もインターネットなどで簡単に手に入れることができます。

この記事を今現在読んでいる皆さんも、健康意識の高い方々かと思います。

しかし、皆さんは運動量を増やして筋肉を増やすことだけでなく「筋肉の質」も大事なことをご存知でしょうか?

近年、年をとるにつれて筋肉の中に脂肪が蓄積することで、筋肉の質が低下することが、以前ご紹介した報告などからも明らかになっています。

筋肉の質はCT画像やMRI画像、もしくは超音波検査で推定することができます。

中でも超音波検査では、検査で得られる超音波の強度(エコー強度:どれだけ超音波を跳ね返すか)が高いほど、筋肉の中に脂肪がある(参考文献・参考資料①)状態に近いと言われています。

つまり、筋肉の質が低い状態です。

例えば、太ももの筋肉(大腿四頭筋)のエコー強度の高さはひとりで歩けるかどうかの程度(杖がないと歩けないなど)と関連がある(参考文献・参考資料②)と言われていますので、筋肉の量だけでなく筋肉の質も大事であると考えられます。

そこで今回は太ももの筋肉の質を含め、筋肉の厚さや皮下脂肪の厚さが4年後にどのように変化したかを、運動量の多いグループと少ないグループに分けて検討した研究を紹介します。

実験開始時点と4年後の変化を比較

この研究は縦断研究と呼ばれる研究デザインに分類される研究方法であり、実験開始時点の指標と4年後の指標を比較・検討しました。

対象者は地域在住の60歳以上の日本人高齢者といたしました。

そのうち、検証を開始した時期と4年後の検査を両方とも受けることが出来たのは131名でした。

検査は次の3つを取り入れました。

■ 超音波検査
右脚の太ももの筋肉の一部(大腿直筋や中間広筋)をターゲットにしています。太ももの中央に超音波を当て、皮下脂肪の厚さと筋肉の厚さ(大腿直筋と中間広筋を合わせた厚さ)、エコー強度(大腿直筋のみ)を計測しました。

■ 筋力測定
右膝を伸ばす筋力を測定しました。測定は2回行い、より大きな値を採用し、また、測定された値は体格による筋力の差を考慮した値に変換されて解析しました。

■ 質問紙検査
運動量や食習慣、糖尿病・変形性膝関節症・アルコール摂取の有無について質問紙を用いて調査しました。

上記の検査以外にも身長・体重を計測してBMIも算出しました。

以上の検査などからBMI、皮下脂肪の厚さ、筋肉の厚さ、エコー強度、膝を伸ばす力をメインの指標として、以下の2つの検討しました。

① 運動量で分けたときの4年後の各指標の変化

② 4年後の各指標の変化量を予測できるかどうか

それでは①から順に見ていきましょう。

運動量で分けたときの4年後の各指標の変化

まずは、4年後の各指標の変化です。

運動量の多いグループ
■ BMI       →変化なし
■ 皮下脂肪の厚さ →減少
■ 筋肉の厚さ   →減少
■ エコー強度   →減少
■ 筋力      →減少

運動量の少ないグループ
■ BMI       →変化なし
■ 皮下脂肪の厚さ →減少
■ 筋肉の厚さ   →減少
■ エコー強度   →変化なし
■ 筋力      →減少

どちらのグループも皮下脂肪の厚さや筋肉の厚さは減少し、筋力も減少しているようです。

そのうち、結果で唯一異なるのがエコー強度です。

エコー強度は運動量の多いグループのみ減少しています。

エコー強度の減少は筋肉内の脂肪の減少などを示すため、運動量の多いグループでは筋肉の質が良い方向に変化したことが考えられます。

4年後の各指標の変化量を予測する因子はあるのか

次に4年後の各指標の変化量を予測できる因子があるかどうかをみていきましょう。

ただし、結果が多くなってしまうため、運動量の多さが各指標の変化量を予測できるかどうかについてのみ記載します。

運動量の多さが変化量を予測できる指標

■ 筋肉の厚さ
■ エコー強度

つまり、運動量が多いほど4年後の筋肉の厚さが厚く、エコー強度が減少している(筋肉の質を高める)可能性があると言えます。

徐々に運動量を増やしていこう!

今回紹介した研究ではBMIや皮下脂肪の厚さ、筋肉の厚さなどが4年間でどのように変化したかを運動量の多いグループと少ないグループに分けて検討し、その変化を運動量の多さが予測するかも検討しました。

まとめると、運動量の多い方が筋肉にとっては良いという結果でしたが、年をとってから急激に運動量を増やすのは重度の筋肉痛や筋断裂、骨折、疲労による転倒などのリスクが高まります。

今まで積極的に身体を動かしてこなかったという方々にはいつもの生活にプラスして、散歩を取り入れるなど低負荷の運動から始めることをオススメします。

その負荷量に身体が慣れてきたら徐々に散歩を早歩きにする,軽めのジョギングにするなど負荷量を増やしていきましょう。

怪我なく健康な生活を送れるといいですね。

この記事が皆さんの健康や運動に対する意識が変わるきっかけになれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】J Appl Physiol (1985). 2018 Aug 16.

【筆頭著者】Fukumoto Y

【タイトル】Association of physical activity with age-related changes in muscle echo intensity in older adults: A 4-year longitudinal study.

【PMID: 30113271