【Point 1.】地中海料理は、心疾患やがんの予防につながる健康的な食事として注目されている
【Point 2.】地中海料理はフレイルや運動機能の障害を予防する可能性があることが新たに示された
【Point 3.】地中海料理に合わせて、普段からバランスの良い食事を心がけていこう!
みなさんは、地中海料理の効果を聞いたことはありますか?
地中海料理とは、イタリアやスペインなどの地中海沿岸で食べられているもので、オリーブ油やナッツ類、野菜、果物をふんだんに使われているのが特徴です。
これは、動脈硬化の予防や心疾患、がんの発症リスクを抑える効果があるとされ、近ごろ注目されている食事です。
今回は、病気の予防につながる地中海料理が、歩く能力などといった運動機能の障害も予防するかどうか検証した報告をご紹介します。
地中海料理の効果を過去の研究をもとに検証
この報告では過去に報告された論文を集め、それらの論文の結果を用いて再度検証を行いました。
以下の単語を用いて論文を検索した結果、合計で1,667の論文がヒットしました。
- 「加齢」「老人」といった高齢者に関する単語
- 「地中海料理」「食事のパターン」といった食事に関する単語
- 「フレイル」「サルコペニア」といった運動能力の低下に関する単語
さらに、60歳以上の高齢者を対象としていることや地中海料理の定義に当てはまった食事をしているかどうかなど、細かい基準を設けて最終的に12本の論文に絞り込みました。
地中海料理の定義には、地中海食スコア(参考文献・参考資料1)を元に推定しました。
地中海料理はフレイルのリスクを下げる!
最終的に残った12の論文の対象者は、合計して20,518名でした。
そのうち4つの論文(対象者数5,789名)をまとめた結果、地中海料理を積極的に食べていると、フレイルのリスクが低くなることが明らかとなりました。
フレイルとは、「老衰や虚弱を指す言葉「フレイル」-実は身近な人もなっている??-」でもお伝えしたような、年を取るにつれて運動機能などの予備力や回復力が低下した状態のことを言います。
地中海料理は身体機能の障害も予防可能??
次に12の論文のうち、地中海料理と運動機能の障害への影響を検証した3つの報告(対象者3,493名)をまとめた結果、将来的に運動機能の障害を予防できる可能性が示されました。
ここでの運動機能は、食事を準備することや日用品の買い物、階段の昇り降りなど、普段生活するうえで必要な活動に関する内容に加えて、生活の質、筋力、歩行速度、バランス能力といった様々な要因を踏まえて定義されました。
サルコペニアへの予防効果もあるの??
サルコペニアに着目した報告では、地中海料理とサルコペニアに関連があることが明らかとなりました。
サルコペニアとは、「知っておくと便利な言葉”サルコペニア”ー実はあなたも発症中?ー」でもご紹介したような、歳を取ることによって筋肉の量が低下し、身体機能が衰えていくことを指します。
しかし、「予防効果」に関しては明らかにできませんでした。
その理由に関して筆者らは、検索された過去の研究の実施方法が異なるために、まとめた結果を出すことができなかったと述べています。
バランスの良い食事が生涯健康の秘訣!!
今回ご紹介した報告では、地中海料理を積極的に摂取していると、フレイルや運動機能の障害を予防できる可能性が示されました。
しかし、今回の報告では注意すべき点があります。
それは、地中海料理を積極的に摂取していた人たちはそもそも健康意識が高い可能性もあり、質の良い食事だけでなく、定期的に運動などを行っていたかもしれないという点です。
残念ながら、今回ご紹介した報告では「健康観」や「運動習慣」については検討できていません。
しかしながら、検討できていない要因を考慮しても、バランスの取れた良い食事は生涯健康でいる秘訣であるといえるでしょう。
先ほどご紹介した地中海食スコア(参考文献・参考資料1)では、地中海料理のポイントとして以下のような内容を含む14項目を挙げています。
- 油は主にオリーブオイルが使われているか?
- 毎日200g以上の野菜を2回以上摂取しているか?
- バターやマーガリンは1日12g以内に抑えられているか?
- 週に150gの魚や200gの海鮮料理を3回以上食べれているか?
みなさんも今日から、地中海料理を始めてみてはいかがでしょうか?
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Nutr Health Aging. 2018;22(6):655-663
【筆頭著者】Silva R
【タイトル】Mediterranean Diet and Musculoskeletal-Functional Outcomes in community-Dwelling Older People: A Systematic Review and Meta-Analysis.
【PMID: 29806854】