【Point 1.】日々の栄養管理は筋肉の量を保つのに大切であり、特に高齢者では重要である
【Point 2.】筋肉量や運動能力を改善するには、定期的な運動と高タンパク質食に加えて、プロテインでさらにタンパク質を補うのが効果的だった
【Point 3.】筋トレなどの効果を上げるには、十分な量のタンパク質を摂取することが望ましい
日々の食事管理や栄養管理は大切です
いくら運動を頑張っても、筋肉の元となるタンパク質が十分に足りていないと筋肉はつかず、むしろやせ細っていく可能性があります。
特に高齢者では筋肉の量が減少しやすいため、できるだけ筋肉の量を維持していきたいところです。
しかしながら、以前「高齢者の筋トレにプロテインやサプリメントは効果なし??-複数の研究をまとめた結果から-」でもご紹介したように、運動に加えてタンパク質などの栄養を補給するとどのような効果があるのかは、未だはっきりとしていません。
そこで、今回は運動に加えてロイシンというアミノ酸を多く含んだプロテインを使った場合、どのような効果があるのかを検証した報告をご紹介します。
運動のみ、プロテインのみ、運動+プロテインの3つを比較
この報告では、65歳から80歳までの健康な日本人女性81人を対象としました。
対象者はランダムに以下の3つに分類されました。
- 運動のみを行う群:27名
- プロテイン補給のみを行う群:27名
- 運動とプロテイン補給の両方を行う群:27名
運動群は、週2回開催される筋力トレを主とした運動プログラムに24週間参加してもらいました。
また81名の対象者全員が、1日に「自身の体重 × 1.2 g」以上のタンパク質を摂取するよう調整しました。
さらに、プロテイン補給のみを行った群と運動とプロテイン補給を行った群では、高たんぱくな食事に加えて22.3 g のタンパク質が含まれているプロテインを補給しました。
その上で、介入を始める前と24週間の介入を行った後に筋肉の量や筋力などを測定しました。
運動とプロテインを併用すると効果あり!!
24週間の介入の結果、運動のみを行った群ではプロテイン補給のみを行った群と比較して筋肉の量が改善していました。
また、プロテイン補給のみの群や運動のみの群と比較して、運動とプロテイン補給を行った群では筋肉の量が改善していました。
したがって、筋肉の量を増やすには運動を行う事が効果的であり、タンパク質を含んだプロテインを使用するとその効果が増大する可能性が示されました。
筋力や歩く速さも改善!
運動のみを行った群ではプロテイン補給のみを行った群と比較して、筋力(握力)や歩く速さの変化に差はありませんでした。
一方、運動とプロテイン補給を行った群では、プロテイン補給のみを行った群と比較して、筋力(握力)や歩く速さが改善していることが分かりました。
「サルコペニアの新たな定義と指標!ーヨーロッパからの最新の報告ー」でもお伝えした通り、筋力や歩く速さは筋肉の量と合わせてサルコペニアの判定によく用いられます。
つまり、運動とプロテイン補給を並行して行うことでサルコペニアになるリスクが下がる可能性があると言えるでしょう。
ポイントはタンパク質の摂取量??
今回ご紹介した報告から、運動とタンパク質補給を合わせると筋肉の量や筋力が改善することが明らかとなりました。
「栄養失調とフレイルはとなり合わせ??」では、体重1 kg あたり1.2~1.5 g のタンパク質を摂取することが推奨されていることをご紹介しました。
このことから、今回の報告の対象者はタンパク質の摂取量は推奨レベルを満たしていることになります。
したがって運動のみを行った群でもタンパク質摂取量は十分に足りていたため、筋肉の量が改善したのではないかと筆者らは述べています。
そのうえで、プロテイン補給をおこなったことで、さらに運動の効果を高めることができたのでしょう。
今回用いられたプロテインは、ロイシンというアミノ酸を多く含んだものを使用しました。
ロイシンは筋タンパクの合成を促進させる効果があると言われています(参考文献・参考資料1)。
一般成人の方にとっては、普段の食生活で必要十分量のロイシンを摂取できるとされていますが、特にご高齢の方の支援を行っている方は、定期的な運動に合わせてロイシンを含んだタンパク質を摂取するようアプローチしてみてはいかがでしょうか?
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Geriatr Gerontol Int. 2018 Sep;18(9):1398-1404.
【筆頭著者】Mori H
【タイトル】Effect of whey protein supplementation after resistance exercise on the muscle mass and physical function of healthy older women: A randomized controlled trial.
【PMID: 30113122】