【Point 1.】高齢閉経女性は骨粗鬆症リスクが高く、骨折が原因で要介護となるリスクが高い
【Point 2.】振動刺激トレーニングは有酸素運動や抵抗運動よりも腰椎の骨密度を改善させる
【Point 3.】骨折リスク軽減には、振動刺激トレーニングが有効である可能性がある
“ブルブル”する機械は一体何なのだろう?
ショッピングモールなどで“ブルブル”と震えている機械が店頭販売されているのを目にしたことはありませんか?
あれは、振動刺激を利用したトレーニング器具で、元は宇宙飛行士の無重力による筋力・骨密度低下を予防する目的で開発が進んだと言われています。
近年では、骨粗鬆症患者や様々な疾患への研究が進んでいます。
特に女性は、閉経後に女性ホルモンの分泌低下・消失によって、骨密度低下が生じやすく、骨粗鬆症となるリスクが高いです。
骨折・転倒は、女性の要介護の主な原因の第二位にランクインしており、骨粗鬆症予防は要介護予防において重要と考えられます(参考文献・参考資料①)。
振動刺激トレーニングは、閉経女性の骨密度改善に効果的であることが報告されていますが、振動刺激トレーニングとその他の運動様式による効果を比較した報告はありませんでした。
今回紹介する研究では、閉経高齢女性の骨密度(本研究では腰椎と大腿骨が対象)に対する振動刺激トレーニング、有酸素運動、筋トレの効果を比較しています。
医療文献データベースから得られた16の研究を解析
この研究は、システマティックレビュー、メタ解析と呼ばれる過去の報告を統合して効果検証を行う研究デザインです。
医療文献データベースから閉経後の女性を対象とした運動トレーニングを行っている文献を検索し、16の研究が得られました。
以下に研究の選定基準を表記しています
■ 英語のランダム化比較試験または対照試験
■ 60歳以上の健康な閉経女性が対象で、ホルモン治療や運動歴がないこと
■ 介入期間中に必要量以上のカルシウム、ビタミンDを摂取していないこと
■ 有酸素運動、筋トレ、それらの複合トレーニングと振動刺激トレーニングを行い、運動をしない対照群と比較していること
■ 腰椎または大腿骨頸部の骨密度を計測していること
メインの結果
トレーニング種類で分けず、“運動トレーニング”として解析すると…
腰椎と大腿骨頸部の骨密度変化に影響を与えませんでした。
トレーニング種類で分けてサブグループ解析すると…
■ 有酸素運動:腰椎の骨密度が減少
■ 筋トレ:骨密度変化に影響なし
■ 有酸素運動+抵抗運動:骨密度変化に影響なし
■ 振動刺激トレーニング:腰椎の骨密度が増加
全ての運動は大腿骨頸部の骨密度変化に影響を与えませんでした。
振動刺激トレーニングが骨粗鬆症予防に有効である可能性が示唆
今回の研究では、振動刺激トレーニングのみが腰椎の骨密度を改善しました。
また、大腿骨頸部の骨密度はどの運動様式でも改善を認めませんでした。
腰椎は圧迫骨折を起こしやすい場所であり、振動刺激トレーニングは高齢者の骨折リスクを軽減できる可能性が示されました。
この研究の限界として、サブグループ解析を行うための研究数が少ないことを著者らも述べており、今回の結果がすべてではないことに注意する必要があります。
例えば、トレッドミルとエルゴメータ、レッグプレスとスクワットなど、運動種類によっても骨へのストレスは異なり、効果が一定ではない可能性があるため、一概に有酸素運動、筋トレの良し悪しをつけることもできません。
振動刺激トレーニングの効果は、不明な点が多く、発展途上のトレーニング方法ですが、骨密度だけでなく、バランス機能や身体機能向上などの効果も報告されています(参考文献・参考資料②,③)。
このように、全身への振動刺激が骨粗鬆症の予防に有効であることが示唆されました。
その一方で、運動不足も骨粗鬆症のリスクとされています。
運動習慣のない方は、まずは運動様式にとらわれず、自分に合った運動から習慣化を図ることが、健康への第一歩です。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Calcif Tissue Int. 2020 Jun;106(6):577-590.
【筆頭著者】Gholam Rasul Mohammad Rahimi
【タイトル】The Impact of Different Modes of Exercise Training on Bone Mineral Density in Older Postmenopausal Women: A Systematic Review and Meta-analysis Research
【PMID: 32055889】
参考文献・参考資料
- 令和3年版高齢社会白書,内閣府
- Wadsworth D, et al. Effects of Whole-Body Vibration Training on the Physical Function of the Frail Elderly: An Open, Randomized Controlled Trial. Arch Phys Med Rehabil. 2020 Jul;101(7):1111-1119.
- Sierra-Guzmán R, et al. Whole-Body-Vibration Training and Balance in Recreational Athletes With Chronic Ankle Instability. J Athl Train. 2018 Apr;53(4):355-363.