1日にどの程度バランスの良い食事をすればいいのか?

フレイル
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理学療法士(PT)/国立大学大学院

バランスの良い食事はメタボなどの予防に大切!?

皆様は普段からバランスの良い食事を心がけていますか?

偏った食事になってしまうと、メタボリックシンドローム(メタボ)や生活習慣病などの不健康な状態になりかねません。

メタボは、主に中年期以降に生じやすい症候群であり、内臓脂肪の蓄積、脂質異常、高血圧、高血糖などの代謝異常を合併し、心疾患、脳血管疾患といった動脈硬化性疾患のリスクが増加した状態とされています(参考文献・参考資料①)。

また、高齢者の場合には食事量の減少などによって、フレイルをきたす要因になることもあります。フレイルは高齢期における問題であり、健常(ロバスト)と要介護状態の間に位置し、何も対策をしなければ近い将来に要介護状態に陥る状態とされています。

フレイルについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

現在、わが国における主な死因の第1位は悪性新生物(がん)、第2位は心疾患、第3位は老衰です。

一方、介護が必要となった要因の第1位は認知症、第2位は脳血管疾患、第3位は高齢による衰弱です(参考文献・参考資料②)。

参考文献・参考資料②をもとに編集部作成)

これらの前段階にメタボやフレイルが深く関連しており、メタボやフレイルをそのまま放置してしまうことは大変危険だといえます。

一方で、メタボやフレイルは可逆性を有していることから、生活習慣の修正などの適切な介入によって改善する可能性を秘めています。

そのため、生活習慣の中で特に意識のしやすい「バランスの良い食事」を心がけている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、本サイトでも数回登場してきた食事(栄養)の側面からできるメタボやフレイルの対策に大切な「バランスの良い食事」の目安となるいくつかの基準をご紹介いたします。

バランスの良さは摂取食品の多様性にあり!

食事は多くの方が毎日必ず一度は行う行為のため、見直しやすい生活習慣の一つだと思います。

当サイトでもこれまでに食事に効率よくたんぱく質やミネラルを取り入れる方法をご紹介してきました。

本記事では、バランスの良い食事を自分で採点する方法として、”食品摂取の多様性得点” をご紹介します(参考文献・参考資料③・④)。

図1:食品摂取の多様性得点(参考文献・参考資料③・④をもとに編集部作成)

食品摂取の多様性得点は、10種類の食品群について、過去1週間の摂取頻度を確認し、点数化するものです。

10種類の食品群とは、肉類・魚介類・卵類・大豆製品・牛乳・緑黄色野菜類・海藻類・いも類・果物および油脂類が含まれています。

各食品群に対して、「ほぼ毎日食べる」に1点、「2日に1回食べる」・「週に1、2回食べる」・「ほとんど食べない」を0点とし、0~10点で評価します(参考文献・参考資料③)。

わが国における地域在住の高齢者において、10点満点の食品摂取の多様性得点を用い4年間追跡した研究では、食品摂取の多様性得点が0~3点の方に比べ、4~6点、7点以上の方は握力や歩行速度といった身体機能の低下が抑制されていることを報告しています(参考文献・参考資料⑤)。

図2. 食品摂取の多様性得点と握力・歩行速度低下との関連(参考文献・参考資料⑤をもとに編集部作成)

また、別法として「ほぼ毎日食べる」に3点、「2日に1回食べる」に2点、「週に1、2回食べる」に1点、「ほとんど食べない」を0点とし、0~30点で評価する方法もあります(参考文献・参考資料④)。

上記の別法を用いて、フレイルと食品摂取の多様性との関連性を検討した研究では、16点以下になるとフレイルに該当する危険性が高まること(オッズ比:3.87)を報告しています(参考文献・参考資料⑥)。

食事の多様性はメタボとフレイルの対策の共通点といえますが、異なる点としては摂取カロリーなどが挙げられます。

この共通点と異なる点については今後の記事をお待ちください。

自己採点の結果を生活に取り入れる方法は?

メタボ・フレイル予防を食事の側面から行うために、まずはご自身の食品摂取の多様性得点を算出してみましょう。

採点で「0点」になった食品を,まずは1食品ずつでも良いので増やしていけると良いですね。

0~3点の方は4点以上を目標に、4~6点の方は7点以上を目標に、7点以上の方はそれを維持することが良いかもしれません。

多様な食品を摂取することが健康長寿の第一歩であり、日々の食事は修正しやすい生活習慣の一つです。
高得点を目指して、今日の献立から見直してみましょう!

【Point 1.】メタボ・フレイル予防にはバランスの良い食事が重要な要素のひとつである
【Point 2.】食事は多様な食品群の摂取を積極的に行ってみよう!
【Point 3.】様々な食品群の組み合わせによる多様な栄養素の摂取が健康長寿への第一歩!


参考文献・参考資料

  1. Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults. Executive Summary of The Third Report of The National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, And Treatment of High Blood Cholesterol In Adults (Adult Treatment Panel III). JAMA. 2001 May 16;285(19):2486-97.
  2. 令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況 | 厚生労働省 (2025年12月16日閲覧)
  3. 熊谷 修, 他. 地域在宅高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能低下の関連. 日本公衆衛生雑誌.2003.50(12):1117-24
  4. Kimura M, et al. Community-based intervention to improve dietary habits and promote physical activity among older adults: a cluster randomized trial. BMC Geriatr. 2013 Jan 23;13:8.
  5. Yokoyama Y, et al. Dietary Variety and Decline in Lean Mass and Physical Performance in Community-Dwelling Older Japanese: A 4-year Follow-Up Study. J Nutr Health Aging. 2017;21(1):11-16.
  6. Kiuchi Y, et al. The Association between Dietary Variety and Physical Frailty in Community-Dwelling Older Adults. Healthcare (Basel). 2021 Jan 1;9(1):32.