知っておくと便利な言葉 “サルコペニア” ー実はあなたも発症中?ー

サルコペニア
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理学療法士

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【Point 1.】サルコペニアとは、歳を取ることによって筋肉の量が減少し、運動能力が低下することを指す

【Point 2.】世界中の研究をまとめた結果、高齢者の約10%がサルコペニアと言われていることがわかった

【Point 3.】サルコペニアにならないようにするには、日頃から運動を習慣づける事が大切である

※ この記事は2021年10月14日に一部リライトされました。

みなさんは「サルコペニア」という言葉をご存知ですか?

サルコペニアとは、歳を取ることによって筋肉の量が低下し、歩く速さが遅くなったり、筋力が衰えていくことを言います。

サルコペニアになると、そうでない人と比較して骨折などになるリスクが高く、心血管疾患による死亡のリスクが高いと言われています(参考文献・参考資料1)。

この「サルコペニア」は、世界的な高齢者人口の増加により、国際的にも深刻な健康問題になりつつあります。

では、サルコペニアは世の中のどれくらいの人が該当するのでしょうか。

今回は、サルコペニアの有病率に関する論文の結果をまとめた報告をご紹介します。

過去の研究からサルコペニアの有病率を分析

こちらの報告では、過去に報告された論文をまとめ、再度解析を行う手法を用いました。

この手法を用いることで、より信頼できる結果が得られるとされています。

今回の報告では、過去にサルコペニアの有病率について検証した報告を検索しました。

その結果 2,329 本の論文がヒットし、60歳未満の人を分析の対象に含んだ研究や重複した論文など、今回の研究の条件に適さない論文を除きました。

最終的に35の論文で約58,000名を対象に、その後の解析を行いました。

高齢者の10人に1人はサルコペニア?!

35の論文を用いてサルコペニアの有病率を検証した結果、男女とも有病率が約10%であることが分かりました。

この結果から、健康な高齢者の10人に1人はサルコペニアであることが推察できます。

なお、筋肉の量の測定にはX線を用いた方法と、身体組織の電気抵抗値から推定した方法の2種類が採用されました。

アジア人の方が有病者は少ない??

また、アジア人のサルコペニア有病率は平均して約10~11%であったのに対し、非アジア人では約19~20%であることが分かりました。

この理由として著者らは、国や人種によって有病率に違いがあることや生活のスタイルの違いが影響しているのではないかと考察しています。

まずは簡単なチェックから!!

今回ご紹介した報告から、健康な高齢者の10人に1人はサルコペニアである可能性があります。

筋肉量は、50歳ごろを目処に減少していくと言われています(参考文献・参考資料2)。

もしかしたら、あなたもサルコペニアに当てはまるかもしれません。

そこで、サルコペニアかどうかを簡単に確認する方法として、「指輪っかテスト」をご紹介します。

やり方はいたって簡単です。

ご自身の両手の親指と人差し指で輪っかをつくり、ふくらはぎを囲みます。

この時に隙間が出来ると、サルコペニアである可能性があります。

ポイントはご自身の手で行う事です。

ご自身の手で行う事で、体格を補正するという役割もあります。

日頃から、食事量や運動量が十分に確保できていると、サルコペニアの予防につながる可能性があります。

特に、もしこのテストで隙間が出来てしまった方は、普段の食事や運動を見直してみるのも良いかもしれません(参考文献・参考資料1)。

加齢による筋肉量の減少を指す「サルコペニア」を予防するためにも、まずはご自身の状態を確認するところから、始めてみましょう。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】J Diabetes Metab Disord. 2017 May 16;16:21.

【筆頭著者】Shafiee G

【タイトル】Prevalence of sarcopenia in the world: a systematic review and meta- analysis of general population studies.

【PMID: 28523252