筋トレだけではなく、たんぱく質の摂り方も意識してみませんか?
健康長寿のためには筋肉がとても大切です。
筋肉をつけるために、習慣的に運動をされている方も多いかと思います。
運動をされている方の中には、運動の効果を最大化するために、たんぱく質の摂取方法を工夫して効率的に筋肉を増やそうと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、健康長寿のために運動をされているご高齢の方にとって適切なたんぱく質の種類や摂取量、摂取のタイミングについてご紹介します。
たんぱく質の種類:筋肉合成を促進するロイシン
食事の基本は、栄養素の偏りがないようにさまざまな食品を摂り入れることです。
たんぱく質を合成するアミノ酸のうち、特にロイシンはたんぱく質合成を促進する作用があると報告されています(参考文献・参考資料①)。
当サイトでも、ロイシンを多く含んだプロテインを運動とともに摂取することで、筋力と歩行速度の増加がみられた報告を紹介しております。
■ なぜアミノ酸のバランスが大切なのか
食事から摂取されたたんぱく質は、消化・吸収されてアミノ酸となり、体内でアミノ酸からたんぱく質が合成されます。
その際に、たんぱく質を構成する全てのアミノ酸が必要となるので、どれか1つのアミノ酸でも不足していれば、たんぱく質の合成がうまく進まず、最も不足する必須アミノ酸(体内で合成できないアミノ酸)によって合成が制限されてしまいます。
そのため、たんぱく質を合成するためにはアミノ酸をバランスよく摂取する必要があるのです(参考文献・参考資料①)。
このたんぱく質中の必須アミノ酸のバランスを元にたんぱく質の利用効率を評価したものを、アミノ酸スコアといいます。
このアミノ酸スコアが高いたんぱく質が良質なたんぱく質とされており、肉や魚、大豆、卵、牛乳はアミノ酸スコアが100なので、良質なたんぱく質とされています(参考文献・参考資料①)。
■ ロイシンの必要量
ロイシンの必要量は、18歳以上の場合39 mg/kg体重/日とされています(参考文献・参考資料②)。
例えば、体重50 kgの方は、1日当たり1950 mg必要です。
たんぱく質が豊富な食品にはロイシンも豊富に含まれていて、例えば焼き鮭(100 g)で2200 mg、鶏のから揚げ5個(150 g)で2700 mg、豚肉のソテー(100 g)で2100 mgのロイシンが含まれています(参考文献・参考資料③)。
(表:主要な食事におけるロイシンの含有量 参考文献・参考資料③より編集部作成)
一方、当サイトでもご紹介をしましたが、サプリメントの効果はまだわからないことが多いとされています。
したがって、サプリメントに頼るのではなく、まずは食品から十分なたんぱく質を摂取することが良いと考えられます。
たんぱく質の摂取量:高齢者は多くのたんぱく質が必要!
高齢者は若年者ほどたんぱく質を摂らなくても良いのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は高齢者のほうがより多くのたんぱく質が必要です。
その理由の1つは、高齢者は若年者と比較して、たんぱく質摂取後に始まる筋たんぱく質合成量が低下しているからです。
よって、骨格筋量を維持するためには若年者よりも多くのたんぱく質が必要となります(参考文献・参考資料④⑤)。
■ たんぱく質の必要量
65歳以上の場合、男性で60 g/日、女性で50 g/日のたんぱく質を摂取することが推奨されており、フレイル及びサルコペニアの発症予防を目的とした場合、少なくとも1.0 g/kg体重/日以上のたんぱく質を摂取することが望ましいと考えれています(参考文献・参考資料②)。
たんぱく質50 gと言われても、具体的に何をどれだけ摂取すれば良いのかわかりにくいかと思いますので、「手ばかり栄養法」をご活用いただくことがおすすめです。
■ 手ばかり栄養法を活用しましょう!
手ばかり栄養法とは、手を使って食材の適量を把握する方法です。
たんぱく質を豊富に含む食品は、手のひらに乗る大きさのものを1日4回とるようにしましょう。
肉や魚は手の厚み程度で、豆腐は1/3丁、鶏卵は1個が目安です。
一般的に身長が高い人は手も大きい傾向にあるので、ご自身の手の大きさにあった量が適量の目安になります(参考文献・参考資料⑥)。
たんぱく質は筋肉を作るために非常に重要ですが、過剰摂取にも注意が必要です。
現時点では、たんぱく質の耐容上限量(過剰摂取による健康障害を起こさないと考えられる最大の摂取量)を設定するための報告は十分でないため定められていませんが、たんぱく質を過剰摂取することで腎機能が低下する可能性があります(参考文献・参考資料②)。
とくに、すでに腎機能が低下している方は、たんぱく質制限が必要な場合も考えられるため、かかりつけの医師と相談したうえで判断するのが望ましいでしょう。
たんぱく質の摂取タイミング:3食均等にとることが第一!
筋肉を増やすためには運動後にたんぱく質を摂取すると良い、と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
運動後にたんぱく質を補給すると、運動による筋たんぱくの分解を抑制し、筋たんぱく質合成を促進して、トレーニング効果を最大化する可能性があります(参考文献・参考資料④)。
しかし、毎日のたんぱく質摂取が十分でない場合は、運動後の補給はあまり重要ではないとされています。
筋たんぱく質合成量の最大化には、運動後のタイミングよりも、総たんぱく質摂取量が重要です(参考文献・参考資料④)。
骨格筋を効率よく合成するためには、たんぱく質を朝、昼、夕と1日3食摂取する必要があります。
夕食に十分な量のたんぱく質を摂取して、血中アミノ酸が一時的に足りていたとしても、朝食と昼食で不足してしまうと、日中のたんぱく質の分解が促進して、筋肉量は低下してしまいます(参考文献・参考資料⑦)。
■ 朝食にたんぱく質を摂りましょう!
高齢者を対象とした調査研究から、朝食にたんぱく質を多くとっている人は、夕食にたんぱく質を多くとっている人よりも、筋肉量や骨格筋指数(筋肉量を身長の二乗で除した値)、握力が高いということがわかりました。
このことから、朝食にたんぱく質を増やすことは、サルコペニア予防に効果的な可能性があります(参考文献・参考資料⑧)。
以上のことから、運動後だけ意識してたんぱく質を摂取するのではなく、特に不足しがちな朝食を意識して朝、昼、夕と毎食たんぱく質を摂取することが重要です。
3食きちんと摂った上で、可能な方は運動後にたんぱく質を摂取するのが良いのではないでしょうか。
【Point 1.】筋たんぱく質合成促進作用が強いロイシンは、肉、魚、大豆、牛乳、卵などの良質なたんぱく質に含まれている
【Point 2.】高齢者はたんぱく質合成効率が低下するため、若年者よりも多くのたんぱく質が必要である
【Point 3.】運動後のたんぱく質摂取は筋肉の合成を促進するが、毎食たんぱく質を摂取することのほうが重要である
参考文献・参考資料
- NutritionCare 2021年 6月号 (2024年3月21日閲覧)
- 日本人の食事摂取基準2020年版 (2024年3月21日閲覧)
- 文部科学省 日本食品標準成分表2020年版 八訂 (2024年3月21日閲覧)
- NutritionCare 2020年 11月号 (2024年3月21日閲覧)
- NutritionCare 2017年 1月号 (2024年3月21日閲覧)
- 手ばかり法をマスターしよう!|協会けんぽ岡山支部 (2024年3月21日閲覧)
- 臨床栄養 134巻 5号 2019年 5月 (2023年3月21日閲覧)
- 臨床栄養 142巻 2号 2023年 2月 (2023年3月21日閲覧)