【Point 1.】摂取したタンパク質が筋肉になるためには、ミネラルが必要不可欠である
【Point 2.】カルシウムやマグネシウムなどのミネラルは、サルコペニアと関連することが分かった
【Point 3.】日頃からバランスの良い食生活を心がけて、ミネラルを摂取していこう!
皆さんは普段どのような食事をされていますか?
野菜中心の食事を心がけている方もいれば、時間に限りがあるためにコンビニ弁当などで済ませる人もいるでしょう。
以前ご紹介した「地中海料理の意外な効果!-フレイルや運動機能の障害を予防する!?-」では、地中海料理を食べることによって、運動機能の障害を予防する可能性が示されました。
この地中海料理は、タンパク質やミネラルなどをバランスよく取れる料理として注目されています。
摂取したタンパク質は、消化や吸収の過程で様々なミネラルを必要とします。
では、ミネラルを摂取することが、サルコペニアを予防することにつながるのでしょうか?
今回は、サルコペニアとミネラルとの関連について検証した報告をご紹介いたします。
ミネラルとサルコペニアとの関連を調べた論文を統合
この報告は、過去に英語で報告された論文を用いて結果をまとめる手法を用いました(メタ分析)。
2名の研究者によって、合計3,346本の論文が見つかり、その中から以下のような選択基準を設けて最終的に10本の論文に厳選したうえで検証が行われました。
- 平均年齢が65歳以上である事
- 筋肉量、筋力、身体機能、もしくはサルコペニアと血中のミネラル濃度やミネラル摂取量について検証している事
- 2006年から2016年の間に出版された英語の論文である事
サルコペニアとミネラルに関連性はありそう!
検証の結果、サルコペニアとミネラルとの関連を検証した報告は以下のようになりました。
- 筋肉量との関連が見られたミネラル: 血中セレン濃度、カルシウム摂取量
- 身体機能との関連が見られたミネラル: マグネシウム、セレン、鉄、亜鉛摂取量
- サルコペニアとの関連が見られたミネラル: マグネシウム、セレン、カルシウム、リン摂取量
なお、ナトリウムやカリウムとの関連を検証した報告のうち、今回の選択基準を満たすものはありませんでした。
過大解釈には注意を!!
今回ご紹介した報告では、関連性を検証する報告 (観察研究) が多く、実際にミネラルを摂取するとどのような効果があるかを検証する報告 (介入研究) までは検証できていません。
また、「あなたの身の回りにもサルコペニアが潜んでいる!?ー最新の報告からー」でもお伝えしたとおり、サルコペニアは評価や定義の方法によってその有病率に違いがあることも言われています。
したがって、今回の結果を解釈するときには、疑いの目を設けることが大切です。
今回の結果から、ミネラルはサルコペニアを予防するのに重要な栄養素であると考えられます。
しかし、サルコペニアの治療に対するミネラルを摂取することの有効性は、介入研究を通して解明していく必要があるだろうと、筆者らは述べています。
バランスの良い食事を
今回は、ミネラルとサルコペニアの関係性について検証した報告をご紹介しました。
現在注目されているミネラルの1つに、報告の中にもあった「セレン」というものがあります。
これは、身体に必要な微量必須元素の1つであり、体内の酸化を予防する作用(抗酸化作用)があります(参考文献・参考資料1)。
また、マグネシウムはアミノ酸からタンパク質を作り出すことなどに関与しており、筋肉をつけるには欠かせないミネラルです。
今回の検証ではサルコペニアの予防効果までは示されませんでしたが、ミネラルを豊富に含んだ食事はサルコペニア以外の健康効果も期待できるでしょう。
日頃からバランスの良い食生活を続けることが大切ですね。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Am Med Dir Assoc. 2018 Jan;19(1):6-11.e3.
【筆頭著者】van Dronkelaar C
【タイトル】Minerals and Sarcopenia; The Role of Calcium, Iron, Magnesium, Phosphorus, Potassium, Selenium, Sodium, and Zinc on Muscle Mass, Muscle Strength, and Physical Performance in Older Adults: A Systematic Review.
【PMID: 28711425】