健康情報を使いこなすためのヘルスリテラシー入門編

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”この記事を書いた人”

理学療法士(PT)/国立大学大学院

正しい健康情報を見抜く力が長生きに繋がる可能性があります

皆さんは、新聞やテレビ番組、インターネットなどの健康情報を正しく理解できるという自信はありますか?

日本人における健康志向は比較的高く(参考文献・参考資料①)、メディアでは食、運動、睡眠、サプリメントと様々な健康関連情報が飛び交っています。

少子高齢化や財政状況から病気の予防や健康長寿には、自身による健康管理が重要と考えられています。

現在、日本人の平均寿命は世界トップクラスであり、男性81.4歳、女性87.5歳となっております。

また、65歳の高齢者の平均余命は、男性19.8歳、女性24.6歳と、年々増加を重ねています(参考文献・参考資料②)

近年では、自身の健康管理と深い関連があるヘルスリテラシーというものが注目されています。

また新型コロナウイルス感染症流行下において、ヘルスリテラシーが高い方はそうでない方に比べ、うつ病の発生が低いことや生活の質が良好であることが示唆されています(参考文献・参考資料③)

ここでは、ヘルスリテラシーという言葉の意味とそれが健康長寿とどのように関わっているかご紹介いたします。

ヘルスリテラシーとは??

健康を意味するヘルスと物事を正確に理解し活用できることを意味するリテラシーの組み合わせで作られた言葉です。

質の高い研究の結果から、ヘルスリテラシーは、以下のように定義されています(参考文献・参考資料④)

ヘルスリテラシーとは、リテラシーと連動しており、生活の質を維持・向上させるために、日常生活の中で健康管理、疾病予防、健康増進に関する判断や意思決定を行うために、健康情報にアクセスし、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力を意味する。

少し、分かりにくい部分をまとめますと、健康情報にアクセスする意欲や健康情報を利活用できる能力のことを指していると思ってください。

ヘルスリテラシーについてもう少し詳しくご紹介していきます。

ヘルスリテラシーには3つの分類がある

ヘルスリテラシーは広い概念のため、機能的なヘルスリテラシー、伝達的なヘルスリテラシー、批判的なヘルスリテラシーと3つに分類して細かく評価している研究もあります(参考文献・参考資料⑤)

本シリーズではまず、リテラシーの基本とも言える機能的ヘルスリテラシーについてご紹介していきます。

機能的ヘルスリテラシーは日常生活の中で効果的に機能するために必要な基本的な読み書き能力とされています(参考文献・参考資料⑤)

では、日本人の機能的ヘルスリテラシーは高いのでしょうか。

我が国の機能的ヘルスリテラシーの実際

我が国における義務教育就学率は99.96%と高く、国民のほとんどが基本的な読み書き能力を備えていることが考えられます(参考文献・参考資料⑥)

一方、機能的ヘルスリテラシーは健康に関する基本的な読み書き能力のことであり、医療用語を含めた健康関連情報における用語は専門性が高く、理解しにくい特徴があります。

最近では、新型コロナウイルス感染症に関連して多くのカタカナがニュースなどで使用されています。

例えば、パンデミック、オーバーシュート、クラスターなどです。

日頃ニュースなどでよく耳にする言葉もありますが、中にはどのような事を表現しているか想像しづらい言葉もありますよね。
これらの専門用語について皆様は正しく理解出来ているでしょうか。

このような専門用語は、身近に医療従事者や専門家がいなければ正しい理解に及ばない可能性があり、知らず知らずのうちに健康を害していることもあると考えられます。

このことから、自らの健康を保つためには、健康に関する用語を正しく理解するためのヘルスリテラシーを備えることが必要だと考えられます。

しかしながら、実際に他の先進国と我が国のヘルスリテラシーを比較した先行研究では欧州諸国より、機能的ヘルスリテラシーが低いことが指摘されています(参考文献・参考資料⑦)

日々健康情報に接する中で、自身で良いなと思った、食習慣や運動習慣を真似して生活に取り入れることがあると思います。

しかし、間違ったあるいは質の低い情報では好ましくない結果をもたらす可能性があることが考えられます。

質の高い健康情報は厚生労働省や学会などが公的に発信している内容やそれらの情報を分かりやすくまとめているサイトを推奨します。

また、当サイトのメッセージでは、情報の「質」を見極める方法についてもご紹介しております。あわせてご覧ください。

本シリーズでは今後、伝達的ヘルスリテラシー、批判的ヘルスリテラシー、ヘルスリテラシーが健康に及ぼす影響についても、順次発信していく予定です。

【Point 1.】少子高齢化や財政の状況から自身による健康管理の果たす役割が増大

【Point 2.】機能的ヘルスリテラシーとは、日常生活の中で効果的に機能する健康情報を読み書きする能力のこと

【Point 3.】質の高い健康情報に触れる習慣を形成していこう!


参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省. 平成26年版厚生労働白書. (2020年10月17日閲覧)
  2. 厚生労働省.主な年齢の平均余命. (2020年10月15日閲覧)
  3. Nguyen HC, Nguyen MH, Do BN, et al. People with Suspected COVID-19 Symptoms Were More Likely Depressed and Had Lower Health-Related Quality of Life: The Potential Benefit of Health Literacy. J Clin Med. 2020:9(4):965.
  4. Sorensen K, Van den Broucke S, Fullam J, et al. Health literacy and public health: a systematic review and integration of definitions and models. BMC Public Health. 2012; 12: 80.
  5. Nutbeam D. Health literacy as a public goal: a challenge forcontemporary health education and communication strategies into the21st century. Health Promot Int 2000, 15(3):259-267.
  6. 文部科学省. (2020年10月15日閲覧)
  7. Nakayama K, et al. Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy. BMC Public Health. 2015; 23;15:505