人との関わりが減ってしまうことによる健康への影響とは?

基礎知識
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理学療法士

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【Point 1.】自主的な外出の自粛に伴って、人との関わりが減ってきてしまうことが懸念されている

【Point 2.】人との関わりが減ってきてしまった「社会的フレイル」な状態だと、死亡のリスクが高まることが示されている

【Point 3.】自粛の緩和後も外出を控えようと考えている方は、外出を控えながらも他人との関わりを維持する手段や方法を模索していこう!

外出の自粛とフレイル予防

新型コロナウイルスの影響で自粛生活が長期に渡って続いてきましたが、ここ最近では徐々に規制の緩和が見られてきました。

一方で、規制が緩和された後も自粛生活を心がけ、人混みを避けたり外出を極力控えたりする方もいらっしゃるかもしれません。

このような自粛生活が長期に渡り、他者との関わりや地域の活動が減ってきてしまうと、ご高齢の方は「社会的フレイル」と呼ばれる状態へと近づきやすくなってしまいます。

社会的フレイルとは「社会的な繋がりの欠如はフレイルドミノの始まり!?」でもお伝えしたように、「フレイルの始まり」であると考える専門家も多く、ご家族や近所の方など、身の回りの人と協力して予防していくことが大切です。

このことは4月17日にNHKでも放映され、「運動」「栄養」と合わせて「人とのつながり」が大切であるとまとめられています(参考文献・参考資料1)。

そこで、今回は2018年に日本で報告された大規模研究の結果をもとに「社会的フレイル」についてもう少し詳しくお伝えいたします。

合わせて、外出自粛要請の緩和後も自主的に自粛した生活を続ける方に、他者とのつながりを維持するためのポイントをお伝えいたします。

日本の高齢者を対象とした大規模研究

この報告は2011年に日本のとある地域に在住していた65歳以上の高齢者、約 6,600名を対象としました。

この研究は「観察研究」と呼ばれ、特に治療や介入をすることはなく、時間の経過に伴って観察した要因がどのようになるかを調査する手法となります。

この報告では「社会的な孤立(社会的フレイル)」を以下のように定義しました。

  • 近所付き合いの程度 ( “挨拶する程度” または “付き合いがない”)
  • 一人暮らしかどうか (”はい”)
  • 地域の活動への参加 (”何もしていない”)
  • 経済面から見た現在の暮らし (”苦しい” または “やや苦しい”)

( )の中に記載した条件のいずれかが当てはまる場合は「社会的フレイルの一歩手前」、2つ以上当てはまる場合は「社会的フレイル」と判断しました。

上記の定義を用いて社会的フレイルかどうかを判断した後、最長6年に渡って調査を続け、新たに介護が必要になったかどうか、もしくは死亡していないかどうかを確認しました。

そのうえで、新たな介護発生と死亡を合わせたリスクを検証しました。

社会的フレイルな状態だと介護と死亡のリスクが上昇することが判明!

前述した社会的フレイルの定義を用いた結果、調査対象の約30%が「社会的フレイルの一歩手前」、約20%が「社会的フレイル」な状態でした。

調査を始めた段階で社会的フレイルの心配がない対象者は全体の約半数でした。

これらの対象者の経過を最大で6年間追ったところ、社会的フレイルな状態だった対象者は社会的フレイルの心配がない人と比較して、介護と死亡を合わせたリスクが1.71倍上昇することが明らかとなりました。

また、社会的フレイルの一歩手前の状態だった対象者も、社会的フレイルの心配がなかった人と比較して、介護と死亡を合わせたリスクが1.28倍上昇することが明らかとなりました。

身体的フレイルや心理的フレイルが合わさると更に高リスク

この報告では社会的フレイルに合わせて、筋力や体力が低下した「身体的フレイル」や抑うつ状態といった「心理的フレイル」が合わさると、更にリスクが上昇することも示されています。

この研究では、約60%の人がプレフレイル、約16%がフレイルに該当していました。

残念ながら、死亡の原因となった病気や介護が必要になった原因まではこの研究では明らかになっていません。

しかし、今回の結果をもとに考察すると社会的フレイルは様々な病気のリスクを相対的に上げている可能性があると思われます。

コロナ自粛に伴って家族や近所との助け合いが必要となる頃合いに

これまで、一人暮らしであることや他者との関わりが少ない状態であることを示す「社会的フレイル」な状態にあると、将来的に様々なリスクが高まることをご紹介いたしました。

では、自粛生活を続けるにあたって、このような「社会的フレイル」をどのように予防していけば良いのでしょうか?以下に、それぞれのケースごとに対応策を提案してみました。

【ご高齢者本人の場合】
  • ラジオ体操など、屋内でできる体操を意識的に取り入れてみる
  • 天気の良い日だけ、人混みを避けた場所へ短時間だけでも外にでてみる
  • 「生活必需品の買い物=運動の機会」と捉えてみる
【ご高齢の方と一緒に暮らしているご家族様の場合】
  • 1日1回以上、定期的な会話をこころがけてみる
  • 定期的に身体を動かしているかどうか、モニタリングしてみる
  • 食欲が低下していないかどうか気にしてみる
【ご高齢のご家族と別居していて、なかなか会えない場合】
  • 定期的に電話や手紙などを通して、連絡をとってみる
  • 生活必需品などを送ったり、金銭的な支援をしてみる
  • 自粛生活が落ち着いた後にどこかへ出かける計画を一緒に立ててみる

ポイントは生活の中で少しでも他者と関わりを持つことです。

上述したの項目を通して、新たな視点が生まれて残りの自粛期間を乗り切るためのヒントになれば幸いです。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】J Am Med Dir Assoc. 2018 Dec;19(12):1099-1103.

【筆頭著者】Yamada M

【タイトル】Social Frailty Predicts Incident Disability and Mortality Among Community-Dwelling Japanese Older Adults.

【PMID: 30471801