働きすぎは不整脈のリスクかも?!

基礎知識
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理学療法士

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【Point 1.】現代では、様々な面で長時間労働が問題視されている

【Point 2.】長時間労働した人は、不整脈のひとつである「心房細動」の発生率が高かった

【Point 3.】今回の結果をもとに、普段のワークライフバランスに気を付けてみよう

身体にとって長時間労働は危険なのでしょうか?!

現在の日本では、長時間労働などの過労が問題視されており、2017年には「過労死等防止対策白書」が厚生労働省から発表されました(参考文献・参考資料1)。

このような問題に対して近年では、仕事と仕事以外の生活との調和(ワークライフバランス)を図る取り組みや活動が多く見られます。

そのような中、今回は長時間労働が「心房細動」という不整脈の発生に影響していることを報告した研究をご紹介いたします。

労働時間によって対象者を分類

この研究では、多施設で行われているデータから、心房細動を発症していない労働者を抽出しました。

その結果、1991年から2004年までに登録された85,494名(平均年齢43.4歳)が対象となりました。

研究を始めた際に、1週間あたりの労働時間をもとに対象者を以下の様に分類しました。

  • 35時間未満
  • 35時間以上、40時間以下
  • 41時間以上、48時間以下
  • 49時間以上、54時間以下
  • 55時間以上

なお、日本の場合、法定の労働時間は1日8時間以下、1週間40時間以下と定められています(参考文献・参考資料2)。

労働時間が長いほど心房細動の発生率が高い!!

平均10年間の期間を空けて、1061名(12.4%)の対象者が新たに心房細動を発症しました。

解析の結果、一週間あたり35~40時間の労働時間を基準とした場合、労働時間が長くなるにつれて心房細動の発生率が高くなる傾向が見られました。

特に、1週間の労働時間が55時間を超えると、心房細動の発生リスクが1.42倍高くなることが明らかとなりました。

なお、この結果は年齢や性別を考慮した後の値となります。

労働時間の解釈に注意を

今回の研究では、研究を始めた段階での労働時間しか考慮できていません。

また、労働時間は時期によってバラつきが生じます。

例として決算などに追われる時期では、普段よりも業務の量が多くなり、結果として労働時間が長くなる可能性があります。

一方で、自営業や業務委託契約による業務を行っている方などの場合、仕事の依頼が少なければ相対的に労働時間は短くなるでしょう。

従って、結果を過小評価もしくは過大評価している可能性があると、筆者らは述べています。

そもそも心房細動って何??

今回は、「心房細動」という不整脈が、長時間労働によって発症しやすくなるかどうかを調べた研究をご紹介しました。

不整脈は、死に直接関係するものから生命にそこまで影響のないものまで、様々あります。

今回の研究で着目した「心房細動」は、生命に直接影響するような不整脈ではありませんが、心臓の中に血栓という血の塊ができやすくなります。

この血栓が血管を通って脳に行くと、脳梗塞などの重篤な病気を引き起こす可能性があります。

2013年に発表された「心房細動治療(薬物)ガイドライン」では、血栓ができるのを予防するために、血の塊を作りにくくする薬を使うことを推奨しています(抗血栓療法)(参考文献・参考資料3)。

労働時間を含めた生活習慣の改善が心房細動の発症を予防するかは未だ明らかではありませんが、今回の結果をもとに、普段のライフワークバランスを意識してみても良いかもしれません。

また、心房細動などの不整脈が気になる場合は、1度かかりつけ医などで相談してみることをオススメします。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Eur Heart J. 2017 Sep 7;38(34):2621-2628.

【筆頭著者】Kivimäki M

【タイトル】Long working hours as a risk factor for atrial fibrillation: a multi-cohort study.

【PMID: 28911189