【Point 1.】29カ国、107名の世界的な研究者によって、サルコペニアの概念的な定義が示された
【Point 2.】サルコペニアは筋肉量と筋力の低下によって構成され、身体機能の低下は結果として生じるものという一定の見解が得られた
【Point 3.】サルコペニアを有しているかどうかを評価して、その後に生じる機能低下などのリスクの大きさを判断していく必要があるだろう
加齢に伴って筋肉量や筋力/機能の低下を示すサルコペニア。
高齢化社会を迎えた昨今において、サルコペニアは日本だけでなく世界的に注目が高まっています。
しかしながら、その定義について国際的な合意は未だ得られていなかったことをご存知ですか?
この問題に対して、2024年3月に Age and Ageing 誌で、サルコペニアにおける世界的なリーダーシップイニシアチブ (Global Leadership Initiative in Sarcopenia: GLIS) による報告が掲載され、サルコペニアの概念に関する世界的な定義が確立されました。
結果として、107名の有識者から、以下の声明に強い見解が得られました。
■ サルコペニアの有病率は年齢とともに増加する(98.3%)
■ サルコペニアの構成要素:筋肉量(89.4%)
■ サルコペニアの構成要素:筋力(93.1%)
■ サルコペニアの構成要素:筋特異的筋力(80.8%)
■ サルコペニアによる影響:身体機能障害のリスクを増加させる(97.9%)
今回の報告では有識者の意見を集約する方法として、「Delphi (デルファイ)法」が用いられております。
これは、あるテーマについて複数回(今回の調査では2回)回答してもらい、ある程度収束した組織的な見解を得ることを目指す方法として知られています。
そのうえで、80%以上の有識者が一致した見解を、今回の報告の結果と定めました。
その結果、サルコペニアの構成要素として身体機能低下を含めることに関する一致率は79.8%と、今回の声明からは外れる結果となりました。
現在、アジアのサルコペニアワーキンググループ (Asian Working Group for Sarcopenia: AWGS) などでは、歩行速度や5回立ち座り時間といった、身体機能低下をサルコペニア基準の1つとして定義されております。
したがって、筋肉量や筋力の測定を通じてサルコペニアを有しているかどうかを評価し、その後に生じる身体機能の低下などのリスクの大きさを判断していく必要があるでしょう。
今後のサルコペニアの定義や研究の動向を追っていく必要がありそうです。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Age Ageing. 2024 Mar 1;53(3):afae052.
【筆頭著者】Kirk B
【タイトル】The Conceptual Definition of Sarcopenia: Delphi Consensus from the Global Leadership Initiative in Sarcopenia (GLIS)
【PMID: 38520141】