【Point 1.】難聴は周りからの情報が制限されてしまうことにより、認知機能低下をきたしやすく、身体的フレイルに陥る可能性が考えられる。
【Point 2.】平均年齢80歳の集団において、難聴は身体的なフレイルと関連することが示された!
【Point 3.】補聴器などを使用することで身体的フレイルが予防されるかは不明だが、難聴の対策をする必要はあるのかもしれない。
耳が遠くなってきたと思うことはありますか?
加齢性の認知症の発症には、難聴が強く関連していることはよく知られています(参考文献・参考資料①)。
また、認知機能の低下は、身体機能低下を引き起こすことによって、フレイルの重症化につながる可能性があります。
では、難聴であることによって、身体的なフレイルのなりやすさは影響されるのでしょうか?
この疑問に対して、2023年11月に Journal of the American Medical Directors Association 誌から、難聴と身体的フレイルとの関連性について調査した報告が掲載されました。
掲載された報告によると、中等度以上(> 40 dB 聴力レベル)の難聴は、フレイルになりやすい傾向が高くなることが示されました(オッズ比:1.62)。
また、中等度以上(> 40 dB 聴力レベル)の難聴は、フレイルの前段階である「プレフレイル」になりやすい傾向が高くなることが示されました(オッズ比:1.25)。
この関連は軽度(> 25 dB 聴力レベル)の補聴器使用者と比較して、非使用者はフレイルである可能性が高く、意図しない体重減少や歩く速さの低下、身体活動量の低下とも関連していました。
この調査は、アメリカの4つの地域で調査された、3179名の高齢者を対象としています(平均年齢:79.2歳)。
聴力の評価は0.5~4.0 kHz の純音聴力測定を使用して、聴力低下なし(≦ 25 dB)、軽度(26~40 dB)、および中等度以上(≧ 40 dB)に分類して検証しました。
今回の調査では補聴器をつけている対象者で身体的フレイルの割合が低いことが示されました。
一方、補聴器をつけることによって身体的フレイルを予防することができるのかは未だ不明であることに留意しましょう。
しかし、聴力低下を予防・改善させることは認知症を予防していくうえで非常に大切であることが知られています(参考文献・参考資料②)。
健診で聴力障害を指摘された、もしくは耳が遠くなってきたと自覚されている場合は、補聴器の導入を検討してみてもいいかもしれませんね。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Am Med Dir Assoc. 2023 Nov;24(11):1683-1689.e5
【筆頭著者】Assi S
【タイトル】Hearing Loss and Frailty among Older Adults: The Atherosclerosis Risk in Communities Study
【PMID: 38520141】
参考文献・参考資料
- Jafari Z, et al. Age-related hearing loss and tinnitus, dementia risk, and auditory amplification outcomes. Ageing Res Rev. 2019 Dec;56:100963.
- Mukadam N, et al. Effective interventions for potentially modifiable risk factors for late-onset dementia: a costs and cost-effectiveness modelling study. Lancet Healthy Longev. 2020 Oct;1(1):e13-e20.