運動不足に睡眠不足が合わさるとどうなるの?

基礎知識
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理学療法士

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【Point 1.】運動不足も睡眠不足も、身体に悪いことはよくわかっている

【Point 2.】数十万人による調査の結果、あらゆる病気による死亡リスクと運動・睡眠不足が関連していることが示された!

【Point 3.】今回の報告や日本の世論調査の結果と調査の基準をもとに、ご自身の生活リズムを今一度振り返ってみよう!

コロナ禍で見えた生活習慣の変化

「コロナ禍で運動不足を痛感してる」

「家で生活する時間が増えて夜更かしすることが多くなった」

皆さんの中でも、この1年で大きく生活リズムが変わったことでしょう。

運動不足も睡眠不足も身体に悪いことはもちろんのことですが、果たして両者が合わさるとどうなのでしょうか?

今回は数十万人にも及ぶ大規模研究の結果をもとに、もう一度ご自身の生活リズムを見直してみましょう。

4つの運動強度と3つの睡眠状況、合計12パターンで検証

この研究は、イギリスのバイオバンクに登録された人のうち、質問票への回答、面接、身体測定データが全てそろっていた約38万人(平均年齢55.9歳、女性55%)の方を対象としました。

心臓病を患ったことのある方やBMIが40以上ある方は除外いたしました。

運動については、調査を始めた段階で以下の4つの群に分類いたしました。

■ 高強度運動群(METs 1,200以上/週)
■ 中強度運動群(同600〜1,200未満/週)
■ 低強度運動群(同600未満/週)
■ 中高強度運動なし群

一方、睡眠については以下の特徴に当てはまらなければ0点、当てはまれば1点で評価し、その合計点数に応じて「良好睡眠」「通常睡眠」「不良睡眠」の3段階に分類いたしました。

■ 概日リズム型(朝型)
■ 睡眠時間(7~8時間)
■ 不眠の有無(通常はなし)
■ いびき(なし)
■ 日中の眠気(なし)

運動4群×睡眠3群の計12群に分けたうえで、統計学的に心臓病やがん、死亡のリスクを算出しました。

運動不足に睡眠不足が合わさると死亡リスクは階段状に上昇

解析の結果、いずれの運動群においても、良好な睡眠が取れていた人は睡眠不足の人と比較して死亡リスクが上昇する傾向にあることが分かりました。

また、良好な睡眠が取れている人同士で比較した場合においても、運動不足な人の方が死亡リスクが上昇する傾向にあることが分かりました。

(図:補足資料表6より編集部改変)

これらのことから、運動不足と睡眠不足のどちらとも、健康への影響は階段状に認められることが分かりました。

がんや心臓病による死亡リスクも同様に上昇

死亡原因を「がん」のみ、ならびに「心臓病」のみに絞って解析を行った場合においても、先ほどと同様の結果となりました。

(図:補足資料表6より編集部改変,身体活動&睡眠不足(がんイベント))

(図:補足資料表6より編集部改変,身体活動&睡眠不足(心血管イベント))

これらのことから、がんや心臓病といった生活習慣病を含むあらゆる病気から自分を守るためには、運動と睡眠の双方が大事であることが示されたと言えるでしょう。

日本人の運動不足×睡眠不足の現状

今回ご紹介した報告から、運動不足と睡眠不足、その両者が組み合わさるとその後の健康状態が良くないことが分かりました。

では、今回の報告の基準と日本人の生活の現状を比較したらどうなのでしょうか?

例えば、今回の報告で用いられた運動強度の基準のうち、低強度運動群(同600未満/週)に到達するには、意識的な運動を週に150分以上行う必要があります(参考文献・参考資料①)

日本人の世論調査によると、6割の方は週1日以上何かしらスポーツを行っていると回答しており、コロナ禍もあってか身体を動かす意識は高まっている傾向にあるようです(参考文献・参考資料②)

一方で、同様の調査の中で約8割の方が運動不足を実感しており、未だ運動量が不十分であることが伺えます。

(図:週1回の運動の実施率と運動不足を感じる人の割合と朝6時に寝ている人の割合)

睡眠不足に目を向けても同様です。

今回の報告の基準の1つである「朝型」に着目すると、朝6時には起床している割合は男女とも40歳代で5割、それ以降の年齢においても4割の方は起床時間が遅いことが伺えます(参考文献・参考資料③)

ご自身のなかで運動不足と睡眠不足のどちらかに心当たりのある方は、これを機に生活リズムを見直してみると良いでしょう。

以下の記事では、運動を習慣化するためのポイントを要約しています。

まずはご自身の普段の生活リズムをチェックすることから、始めてみてはいかがでしょうか?


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Br J Sports Med. 2021 Jun 29;bjsports-2021-104046.

【筆頭著者】Bo-Huei Huang

【タイトル】Sleep and physical activity in relation to all-cause, cardiovascular disease and cancer mortality risk

【PMID:34187783


参考文献・参考資料

  1. 国際標準化身体活動質問票のデータ処理および解析に関するガイドライン (2021年8月15日閲覧)
  2. スポーツの実施状況等に関する世論調査 (2021年8月15日閲覧)
  3. あなたの睡眠時間は平均より長い?短い? NHK放送文化研究所 世論調査部 (2021年8月15日閲覧)