【2025年最新版】アジアのサルコペニア基準の変更点を分かりやすく教えて!

サルコペニア
この記事は約6分で読めます。
”この記事を書いた人”

理学療法士

山下真司をフォローする

【Point 1.】2025年11月に行われた学術集会にて、アジアの新たなサルコペニア基準が発表された。

【Point 2.】サルコペニアの概念や診断の対象、診断に用いられる項目に変更があった。

【Point 3.】新たな基準を自身の現場で活用してみよう!

2025年、アジアの新しいサルコペニア基準が発表されました!

2025年11月、熊本県の熊本城ホールで開催された「第12回日本サルコペニア・フレイル学会大会」にて、Asia Working Group for Sarcopenia (AWGS) によるアジア人におけるサルコペニア基準の2025年改訂版が発表されました。

当サイトでは、過去に改定されたAWGS2019についても、その改定ポイントについて詳しくご紹介しておりました。

この記事では、2019年に改定されたAWGS2019から実に6年ぶりの改定となった本基準の改定ポイントについて、図を用いてご紹介いたします。

ポイントは『概念的進化』

AWGS2019からの改定ポイントは、主に以下の6つであることが触れられており、全体を通じて『サルコペニア』の概念が再検討されています。

  1. 適用範囲の拡大:中年層を含むライフコースアプローチへ
  2. 診断制度:アジア人データに基づくカットオフ値の精緻化
  3. 概念的転換:健康長寿に不可欠な骨格筋機能の概念化へ
  4. 実装戦略:各現場に応じて差別化されたアプローチと実践的なアルゴリズムを
  5. 生理学的理解:筋肉-臓器間の相互作用と移動以外の骨格筋の全身的役割への注目
  6. ケアシステムとの統合:既存の枠組み(特にWHOのICOPE)への統合

ICOPEはIntegrated Care for Older People(高齢者のための統合ケア)の略であり、WHOから発出されたツールになります(参考文献・参考資料①)。

その基本概念は、①基本的評価、②詳細な評価、③個別化されたケアプランの作成、④実施とモニタリング、ならびに再評価で構成されており、その目的は高齢者が身体的および精神的な能力をできるだけ維持し、健康寿命を延伸することとされております。

GLISに基づいた新たな診断基準

以下に、2019年に発表されたアジアサルコペニア基準と今回改定されたアジアサルコペニア基準を比較した画像をお示しします。

今回の改定は、Global Leadership Initiative in Sarcopenia(GLIS)で提言されたサルコペニアの概念定義に基づいていることが最大の変更点と言えるでしょう。

それぞれの変更点を見ていきましょう。

  • 中年層の定義が追加された
    今回の改定により、Muscle Health に懸念のある中年層においても、サルコペニアかどうかを判断したほうが良いことが明示されました。合わせて、先行研究に基づいて、中年層における基準値(カットオフ値)が新たに設けられました。
  • 定義は筋力低下+筋肉量減少
    AWGS2019までは、サルコペニアの定義は「筋肉量の減少+筋力または身体機能の低下」で定義されておりました。しかしながら、GLISで提言された概念定義では、サルコペニアは筋肉量の減少、筋力低下および筋特異的筋力(muscle specific strength)の低下であることが示され、今回の改定でも、それに準じた形となりました。しかし、筋特異的筋力については未だ十分な知見が得られていないこともあるため、今回の定義からは除かれました。
  • 身体機能低下はアウトカムに
    AWGS2019までは、身体機能低下はサルコペニアの定義として扱われてきましたが、AWGS2025ではGLISの提言に基づいて、アウトカムとして示されました。それに伴い、AWGS2019にあった『重症サルコペニア』という概念は無くなる形となりました。GLISでは、サルコペニアのアウトカムには身体機能低下の他に、(手段的)日常生活活動の障害や生活の質があると示されております(参考文献・参考資料②)。一方、AWGS2025では、併存する疾患などの状態や、社会的・身体的環境の詳細な評価を行うことが新たに明記されました。
  • 筋肉量の補正は身長の二乗、もしくはBMIで
    今回の改定では、従来と同様、DEXA法による骨格筋量の測定と、BIA法による骨格筋量の測定が採用されました。一方、従来から行われてきていた身長の二乗による骨格筋量の補正では、低筋肉量を十分に反映できていない可能性が示唆されており、今回の改訂版では新たにBMIで補正する手法が導入されました(参考文献・参考資料③)。

今回の改定のまとめ

今回は、AWGS2019と比較したAWGS2025の改定ポイントについて、図を用いながら要点をお伝えいたしました。

本記事では触れていない重要な変更点は他にもいくつかございますが、詳細は一次情報源である論文等を参考にしていただきたいと思います。

今回発表された新たな診断基準を元に、サルコペニアの早期発見、早期改善を目指していきたいところですね。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Nat Aging. 2025.

【筆頭著者】Chen LK

【タイトル】A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update

【PMID: (随時更新予定) 】


参考文献・参考資料

  1. ICOPE Digital publications | World Health Organization (2025年11月3日 閲覧)
  2. Beaudart C, et al. Global Leadership Initiative in Sarcopenia (GLIS) group. Health outcomes of sarcopenia: a consensus report by the outcome working group of the Global Leadership Initiative in Sarcopenia (GLIS). Aging Clin Exp Res. 2025 Mar 22;37(1):100.
  3. Visser M, et al. Muscle mass adjustment for body size: is using a ratio doing the job? A cross-sectional study in two samples of older adults. Eur Geriatr Med. 2025 Oct;16(5):1771-1775.