いつまでも健康でいるために、生活習慣を見直しましょう
日本人の死因の上位を占めているのは、がんや心臓病、脳卒中です。
これらは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与するため、生活習慣病といわれています(参考文献・参考資料①)。
生活習慣のうち、運動を例に挙げると、運動不足によって心臓の機能が低下するなど、生活習慣病を引き起こす可能性があることも紹介してきました。
一方、運動習慣があるとどのようなメリットがあるでしょうか?
フレイルの予防効果はもちろんのこと、糖尿病患者においては筋トレなどの運動習慣が筋肉量の維持のほか、血糖コントロールにも有効であることなども明らかになっています。
これらのことから、生活習慣病において運動が重要であることはご理解いただけたと思いますが、運動習慣以外にもうひとつ、毎日の生活に欠かせないのが『食事』です。
適切な食事を心がけることで、生活習慣病の予防にもフレイルの予防にもつながります。
そこで今回は、高齢者における生活習慣病の予防・改善に着目した食事のポイントをいくつかご紹介します。
栄養バランスの整った食事
食事の基本は、栄養素の偏りがないようにさまざまな食品を摂り入れることです。
まずは1日3食、主食・主菜・副菜のそろった食事を心がけましょう(参考文献・参考資料②・③)。
■ 主食(ごはん・パン・麺)はお茶碗1杯程度。身体を動かすエネルギー源
■ 主菜(肉・魚・卵・大豆製品など)は毎食1品、片手のひらにのる量、魚であれば、切り身1切れ(100g程度)が目安(参考文献・参考資料④)
■ 副菜(野菜・きのこ・海藻)は毎食1~2品程度。身体の調子を整えるビタミン・ミネラルが豊富
さらに、1日1回程度は乳製品・果物を摂ることで、不足しがちなビタミン・ミネラルを補いやすくなります。
食事の内容だけでなく食べ方も大切です。腹八分目を目安に、よく噛んで食べることも意識しましょう。
塩分の摂り過ぎに注意!
突然ですが、日本人の食塩摂取量の平均はご存じですか?
年々減少傾向とされていますが、男性10.9g、女性9.3gの食塩を1日平均で摂取しています。
なかでも、食塩摂取量が最も多い年代は男女ともに60歳代となっております(参考文献・参考資料⑤)。
一方、成人の1日の食塩摂取目標量は一般的に男性7.5g未満、女性6.5g未満、高血圧患者では6.0g未満とされています(参考文献・参考資料③・⑥)。
これらを比べてみると、男女ともに3g程度オーバーしていることが分かりますね。
60歳代以降では食塩摂取量の平均値を上回っている傾向にあるため、摂取量を抑える必要があります。
日本人が好んで食べる「和食」。
例えば干物や煮物、漬物は食塩量が多い食品のひとつであるため、いつの間にか食塩を摂り過ぎていることもあるかもしれません…。
では、どんなことを意識すれば減塩につながるでしょうか。
<減塩継続の秘訣! 1食につき1品のみ、味の濃いメニューを>
【悪い例】
ご飯(0.0g) + あじの干物(1.4g)+きゅうりの酢の物(0.5g) + みそ汁(1.5g)
【よい例】
ご飯(0.0g) + あじの干物(1.4g)+きゅうりの酢の物(0.5g) + ほうれん草のお浸し(0.4g)+ お茶(0.0g) (参考文献・参考資料⑦)
~献立のポイント~
主菜:食塩量の多いあじの干物はしょうゆをかけず、干物の塩味のみでいただく。
副菜:みそ汁から出汁をきかせたお浸しに変更。出汁に含まれるうま味成分が少ない食塩量でも味を引き立てる。
汁物:みそ汁は減塩のためにも1日1杯程度に。食塩を含まない水やお茶で水分補給を。
すべての料理を薄味にしてしまうと、味気がなくなり食べ残す原因にも…
メインの主菜はいつもの味付けにし、残りの料理は薄味にすることで、味にメリハリがついて食べやすくなります。
<カリウムを含む野菜や海藻類を摂りましょう!>
野菜や海藻に多く含まれるカリウムには、食塩(ナトリウム)を体の外に出しやすくする作用があり、塩分の摂り過ぎを調節するのに役立ちます(参考文献・参考資料⑧)。
汁物は冷蔵庫の余り野菜を入れて具沢山にしたり、サラダを追加したりするなど普段より野菜を多く摂ることを心がけてみましょう。
さまざまな働きが期待される食物繊維
食物繊維には、体内でコレステロールから作られる胆汁酸の体外への排泄を促進し、血中コレステロール値をさげる作用や、食後の糖の吸収をゆるやかにして血糖値の急激な上昇を抑えたりする作用があります(参考文献・参考資料⑨)。
そのため、血糖値が気になる方は「主食(炭水化物)を食べ進める前に、食物繊維を含む料理を食べること」がおすすめです。
<いつもの食事にプラス1品の副菜>
食物繊維は、不足しがちな栄養素のひとつ。
いつもの食事にプラス1品の副菜を摂り入れることから意識してみましょう。
そのまま食べられるミニトマトやめかぶ・もずくなどの食品、冷凍野菜などを常備しておくこともおすすめです。
(例)冷凍の洋風野菜:スープ具材、主菜の添え野菜、ホットサラダ、甘酢ピクルスなど
冷凍野菜は、生野菜と比べて日持ちすることも嬉しいポイント!
<主食にも食物繊維を>
野菜が苦手な方や食事量が少なく1品増やすことが難しい場合には、主食に工夫を加えましょう。
(例)
■ 白米ごはん → 玄米や雑穀米、押し麦を混ぜる
■ パン → ライ麦パン、全粒粉パン
■ うどん → そば
たんぱく質はたくさん摂るべき?それとも控えるべき?
当サイトでは、高齢者のフレイル・サルコペニアの予防のためには、エネルギーの摂取に加え、しっかりたんぱく質を摂取することを紹介してきました。
一方、高齢者の中には加齢に伴い腎機能障害を併発している場合もあるため、たんぱく質制限が必要な場合も考えられます。
しかし、たんぱく質制限と積極的なたんぱく質摂取のどちらを優先すべきかは、エビデンスが十分ではないとされています(参考文献・参考資料⑩)。
たんぱく質を制限すべきかどうか分からない場合は、かかりつけの医師と相談したうえで判断するのが望ましいでしょう。
<たんぱく質制限が必要な場合は…>
決められた範囲内で肉や魚・卵・乳製品・大豆製品などの良質なたんぱく質を上手に活用しなくてはなりません。
そのためには、たんぱく質が少なくても満足できるように調理法を工夫しましょう。
(例)
■ チャーハン・ピラフ:主食として食べるため、少ないたんぱく質でも気になりにくい。
■ 天ぷら:魚介の天ぷらのほか、野菜の天ぷらを盛り付けることで満足感のある見た目に。
上記のような料理は、油で炒めたり揚げたりしているため、エネルギーアップにつながります。
また、たんぱく質を減らすことで全体のエネルギー摂取量が不足しやすくなります。
他のエネルギー源となる炭水化物や脂質を増やし、全体のエネルギー摂取量を確保できるようにしましょう。
ひとりひとりに合わせた健康管理が大切!
生活習慣病の予防・改善には過栄養には気をつけたいですが、高齢者の場合は低栄養にも注意が必要です(参考文献・参考資料⑪)。
病気の進行を防ぐためにも、まずはご自身の生活習慣を振り返ってみましょう。
ご自身で判断ができない場合は、かかりつけの医療機関へ相談することも重要です。
長年定着した習慣を変えることは簡単ではありませんが、バランスのよい食事に少しでも近づくために、今回紹介したポイントから「できそうなこと」を実践してみませんか?
【Point 1.】食事の基本は、主食・主菜・副菜のそろった食事
【Point 2.】疾患の予防・改善のためには、普段の食生活を振り返り工夫しよう!
【Point 3.】継続の秘訣は無理せずにできることから始めること
参考文献・参考資料
- 生活習慣病とは? | e-ヘルスネット. 厚生労働省 (2023年6月6日閲覧)
- Kurotani K, et al.: Japan Public Health Center based Prospective Study Group. Quality of diet and mortality among Japanese men and women: Japan Public Health Center based prospective study. BMJ. 2016 Mar 22;352:i1209.
- 高血圧診療ガイドライン2019
- 手ばかり法をマスターしよう!|協会けんぽ岡山支部 (2023年6月6日閲覧)
- 令和元年 国民健康・栄養調査報告|厚生労働省
- 日本人の食事摂取基準(2020年版)
- 日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省
- カリウム | e-ヘルスネット. 厚生労働省 (2023年06月06日閲覧)
- 食物繊維の必要性と健康 | e-ヘルスネット. 厚生労働省 (2023年06月06日閲覧)
- 糖尿病患者の栄養食事指導,日本糖尿病学会誌,第63巻第3号, 2020
- 健康長寿診療ハンドブック||日本老年医学会