【Point 1.】2018年にヨーロッパにおけるサルコペニアの定義や基準が改定された
【Point 2.】新たな指標として、椅子の立ち上がりテストやTUG、400m歩行などが加えられた
【Point 3.】サルコペニアの指標は多くあるが、環境や対象者に適したものを使えると良い
※ この記事は2021年10月14日に一部リライトされました。
2018年に、ヨーロッパのサルコペニアの定義が改訂されました!
サルコペニア定義の改訂版(参考文献・参考資料①)
この記事では、2010年に作成されたヨーロッパのサルコペニアの定義と、今回改定された定義を比較して、変更点や注意点についてご紹介していきます。
ご高齢者さんの体調の変化を把握するうえで、このような定義や指標は1つの基準となり、良くなったかどうかの判断材料になるでしょう。
また、研究などを行う上ではその測定が自分の知りたい能力を捉えられているか(妥当性)や、その測定結果が正しいかどうか(信頼性)などが大切となります。
ワーキンググループなどが発表する指標は、信頼性・妥当性どちらとも、高い水準を担保できているものと思われます。
では、まずサルコペニアの定義から確認してみましょう。
サルコペニアは高齢者だけではない?!
ヨーロッパ・サルコペニア・ワーキンググループ(EWGSOP)から発表された今回の改定では、サルコペニアを以下の様に操作的に定義しています。
[抄録]
Sarcopenia is a muscle disease (muscle failure) rooted in adverse muscle changes that accrue across a lifetime; sarcopenia is common among adults of older age but can also occur earlier in life.
サルコペニアは生涯にわたって発生する有害な筋肉の変化に由来する筋肉疾患(筋障害)である。 サルコペニアは高齢の成人には一般的だが、より早期に発症する可能性もある。
[本文]
Sarcopenia is a progressive and generalised skeletal muscle disorder that is associated with increased likelihood of adverse outcomes including falls, fractures, physical disability and mortality.
サルコペニアは進行性および全身性の骨格筋障害であり、転倒、骨折、身体障害および死亡を含む有害な転帰の可能性の増加に関連する。
今回の定義の変更点として大きなポイントのひとつとなっているのは、筋力の評価が最優先であるという点です。
これは死亡や入院などの有害転帰を予測する際に、筋力が筋量よりも優れていると先行研究で報告されているためです。
また、今回の定義に「高齢者」と厳格していない点を踏まえると、サルコペニアは高齢者だけではないことを示唆していると考えられるでしょう。
スクリーニング検査にはSARC-F
サルコペニアのスクリーニング指標には、自記式質問指標であるSARC-Fを推奨しています。
この質問指標は屋内移動の困難さや転倒歴など、5つの質問で構成されています。
先行研究では、筋力低下の予測に関して中程度の感度と高い特異度があると報告されており、スクリーニング指標としての有用性は高いと思われます。
日本語版での報告もあるので、すぐにでも活用できる指標となるでしょう。
筋力低下にてProbableサルコペニア
SARC-Fで陽性だった場合、次に筋力の評価を行います。
筋力の指標とそのカットオフ値は次の通りです。
- 5回立ち座り動作>15秒
- 握力:男性<27kg,女性<16kg
今回、新たな筋力指標として新たに立ち座り動作が筋力低下の評価指標として加えられました。
この立ち上がり動作は、後に紹介するSPPBの評価項目の1つにもなっており、手を使わずになるべく早く立ち座り運動を繰り返した際の時間を測定します。
一方で、握力は前回と同様の定義となっております。
サルコペニアの定義は「筋力低下+筋量低下」
今回の改訂から、サルコペニアの定義に身体機能低下は含まず、「筋力低下+筋量低下」とすることになりました。
この筋量低下の評価指標には、下記のようなものがあります。
- 生体インピーダンス法(BIA: Bioelectrical Impedance Analysis)
- 二重エネルギーX線吸収測定法(DXA:Dual-energy X-ray Absorptiometry)
- 画像を用いた測定法(MRI:Magnetic resonance imaging,CT:computed tomography)
このうち、BIA法とDXA法で測定可能な四肢筋肉量を次のように定義しています。
- 四肢筋肉量:男性 <20kg,女性 <15kg
- 四肢筋肉量/身長の二乗:男性 <7.0kg/m2,女性 <6.0kg/m2
ポイントは「四肢(両腕と両足)の筋肉量」を用いていることです。
「全身の筋肉量」ではありませんのでご注意ください。
一方、画像を用いた測定法のカットオフ値は定められていませんが、第三腰椎レベルでの骨格筋横断面積や、大腿中間位での骨格筋横断面積の有用性が報告されていることから、測定を行う価値は十分にあるでしょう。
ただし、一部の小さな筋肉(大腰筋など)のみの測定では全身を反映しているとは言い切れないため、あまり推奨されない可能性があります。
加えて、近年ではCTやMRIなどの医用画像から骨格筋の質を評価しようと試みている報告が増えてきています。
将来的に筋肉の質を評価することは、より有用な治療の選択や治療の効果を判定するのに役立つのではないかと期待されています。
身体機能低下を認めれば「重度サルコペニア」
サルコペニア(筋力低下+筋量低下)に加えて、身体機能の低下を認めた場合、「重症サルコペニア」と定義することが出来ます。
ここでの身体機能低下の評価指標は、以下のものが採用されました。
- 歩行速度 ≦0.8m/s
- SPPB:Short Physical performance Battely ≦8点
- TUG:Time Up and Go test ≧20秒
- 400m歩行 ≧6分 または400m未満
SPPBは先ほど挙げた立ち座り動作に加えて、歩行速度、静止立位バランスを12点満点に得点化した評価指標です。
4mほどの狭いスペースで評価することが可能であり、幅広い分野で活用が期待できます。
TUGは立ち上がってから3m先の目標物を折り返して座るまでの時間を計る検査で、移動能力や動的バランスなどを網羅的に評価できる指標となっています。
400mを6分で歩けかどうかは、主に運動耐容能の反映する指標として知られています。
特に呼吸器疾患や循環器疾患の分野で広く用いられています。
スクリーニング検査から詳細な測定まで、幅広く網羅!!
以上、今回改定されたサルコペニアの定義や新たに加えられた指標を簡単にご紹介しました。
全体的に、前回のステートメントよりも幅広い定義となっており、評価指標も数多く採用されました。
そのため、臨床や地域、介護施設など、場面に応じて使い分けることが出来そうな定義であると思われます。
今回ご紹介しなかったものには、SarQoL questionnaireなどがあります。
またサルコペニア肥満などは、今回の調査の範囲外であるとしています。
詳細をお知りになりたい場合は、オープンアクセスとなっていますので、是非ご自身で一読してみることをオススメいたします。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Age Ageing. 2018 Oct 12.
【筆頭著者】Cruz-Jentoft AJ
【タイトル】Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis
【PMID: 30312372】