【Point 1.】不摂生な生活は高血圧のリスクを高める!?
【Point 2.】朝に軽い運動を取り入れることで血圧を下げることができる!
【Point 3.】朝は簡単な運動を行ってから1日をスタートさせよう!
高血圧は生活習慣病のリスクを高める?!
2025年には、「団塊の世代」が後期高齢者(75歳以上)の年齢に達し、医療や介護などの社会保障費の急増が懸念されています(参考文献・参考資料①)。
来たる2025年に向けて、テレビやニュースなどで「生活習慣病予防」に関する話題があげられています。
生活習慣病とは、不良な生活習慣が原因となって生じる病気のことを指し、心臓病や脳卒中などといった重篤な病気が含まれます(参考文献・参考資料②)。
そして、生活習慣病には「食生活」「運動習慣」「喫煙」「飲酒」などが関与しており、これらの要因により「高血圧」になると、脳卒中や心臓病などの恐ろしい病気を患うリスクが高くなります。
一般的に血圧を下げるためには、少なくとも週一回以上の頻度で中強度の運動を行うことが推奨されております(参考文献・参考資料③)。
皆様のなかには、病院やクリニックでも高血圧を予防するためには計画的に運動習慣をつけるよう指導される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はこの「運動」と「血圧」の関係性に関して、朝の行動の取り方が血圧に及ぼす影響を検討した研究をご紹介します。
座りがちな高齢者を対象に朝の運動を実施
本研究では、67名の日中の活動量が少ない高齢者(50〜80歳)が研究の対象として集められました。
ここで集められた被験者は、最低6日間の間隔を空けて、朝の8時からランダムに3つの実験に参加しました。
条件① 座位のみ(8時間)
条件② 中強度の運動(0.5時間)+座位(7.5時間)
条件③ 中強度の運動(0.5時間)+0.5時間に1回の低強度運動(6.5時間)+座位(1時間)
ここで行われた運動はトレッドミルを使用して行われ(時速3.2km)、運動強度はトレッドミルの傾斜を用いて下記のように調整されました。
■中強度:最大心拍数の65~75%になるように各個人で調節
■低強度:時速3.2kmで傾斜はなし
対象者は日中、テレビや電話など血圧を上がる恐れのある行動は避け、座っている間は静かに読書やパソコン作業を行うように指示されました。
本研究では8時から16時まで実験を行い、心拍数、主観的な疲労感、血液データが検査者によって適宜計測し、それらのデータを用いて、条件や性別の違いが血圧に及ぼす影響を解析しました。
朝に適度に運動を行うことで血圧を下げられる!
本研究では以下のことが明らかになりました。
■座位のみ(条件①)よりも朝に運動を行った方(条件②と条件③)が、実験後8時間にわたって収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)が低かった。
■血圧の低下の程度は条件②よりも条件③の方が大きかった。
これらの結果から、起床後から座り続けるよりも、30分程度のウォーキングを行うだけで、血圧を下げられる可能性が示されました。
加えて、朝の運動を30分だけに留めず、30分毎に短時間でも軽い運動を行うことで、さらに血圧を下げられる可能性が示されました。
男女間では血圧の下がり方が異なる!?
さらに本研究では、朝の運動による血圧低下と性別との関係について追加の解析が行われました。
その結果以下のことが明らかになりました。
女性では・・・
■座位のみ(条件①)よりも朝に運動を行った方が収縮期血圧(上の血圧)が低く、条件②よりも条件③の方がさらに血圧が低かった。
■拡張期血圧(下の血圧)は座位のみよりも条件③の方のみ低かった。
男性では・・・
■座位のみよりも朝に運動を行った方が収縮期血圧(上の血圧)が低かったが、条件②と条件③の間には有意差を認めなかった。
■拡張期血圧(下の血圧)は条件間で有意差を認めなかった。
これらの結果から、朝の運動に伴う血圧の変動には性別の影響も関与している可能性が示されました。
しかし、男性でも運動を行うことで血圧が低下することが示されたことから、男女共に朝の軽い運動を行うことは十分に意義のあることだと思われます。
1日の始まりは簡単な運動から!
今回の研究では、朝に行う短時間の運動は血圧を下げるだけでなく、軽い運動を継続して行うことでさらに高血圧のリスクを下げられる可能性が示されました。
そして、この運動に伴う血圧の変動は性別の影響も関与している可能性も示されました。
一方、本研究では身体機能に及ぼす影響は調査していないため、朝の運動によってどれだけ「筋力」や「体力」が向上するかは明らかになっていません。
これに関して、過去に筋トレを行うタイミングに着目した記事では朝と夕方のどちらでも効果は同じであるということを記しています。
したがって、運動によって身体機能を向上させつつ、血圧の低下を図りたい場合は、夕方よりも朝に運動を取り入れる方が効果的な可能性があります。
本研究で用いた中強度の運動は犬の散歩やなどと、低強度の運動はストレッチなどと同程度の運動強度と言われています。
そのため、1日の初めに散歩や柔軟体操などを行うことで、脳卒中や心臓病の原因である「高血圧」を予防できるかもしれません。
また、ある程度運動に慣れてきたところで軽い運動を追加することで、より血圧の低下を図ることができそうです。
昨今のコロナの影響で、今後も外出を控え、おうち時間を過ごすことが多くなりそうです。
皆さんも簡単な運動習慣を身につけて、健康的な身体づくりを意識していきましょう!
この記事が皆さんの健康や運動に対する意識を変えるきっかけになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Hypertension. 2019 Apr;73(4):859-867.
【筆頭著者】Wheeler MJ
【タイトル】Effect of Morning Exercise With or Without Breaks in Prolonged Sitting on Blood Pressure in Older Overweight/Obese Adults.
【PMID: 30782027】
参考文献・参考資料