女性の血管の周りに付いてる脂肪が歩きに影響?!

基礎知識
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理学療法士

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【Point 1.】脂肪は生活習慣の乱れなどによって、いたるところに付着する

【Point 2.】血管の周りに付着した脂肪は、将来の歩く速さに影響することが分かった!

【Point 3.】将来の健康を考え、食事と運動を中心に生活習慣をコントロールして、余分な脂肪を減らしていこう!

脂肪はいたるところに付着します

脂肪は様々なところに付着します。よく耳にする皮下脂肪や内臓脂肪はもちろんのこと、筋肉の中にできる筋内脂肪や脂肪肝などもあります。

これらの体脂肪は生活習慣の乱れが原因で多く付着してしまうと、心臓病などの原因になってしまいます。

さらに、上記で示した脂肪以外にも血管の周りに付着する脂肪もあります。果たして、血管の周りに付着した脂肪は何か悪い影響をもたらすのでしょうか?

CTを用いて女性の血管をチェック

今回ご紹介する報告は、全国女性健康調査研究(SWAN:The Study of Women’s Health Across the Nation Respiratory)から発表されました(参考文献・参考資料①)。この調査は、6つの州(カリフォルニア州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ミシガン州、ニュージャージー州、ペンシルバニア州)からなる大規模な研究です。

この研究では、中年層の女性の血管周囲にある脂肪の量と歩く速さを中心に調査しました。なぜなら、中年期は女性にとってホルモンなどによる体の変化が後の老化過程に影響する重要な時期であるためです。

対象は、3,302名の中年女性のうち、今回の研究の条件にマッチした276名としました(平均年齢51.3歳)。

今回は下行大動脈(心臓から伸びる太い動脈)の周りにある脂肪をCT画像を用いて測定しました。この下行大動脈は胴体や下半身に血液を送る際のメインとなる動脈です。

歩く速さは、血管の周囲にある脂肪を測定した約10年後に測定しました。

血管の周りにある脂肪が多いと将来の歩く速さに影響

解析の結果、血管の周りにある脂肪の量が多いほど、10年後の歩く速さが遅くなることが明らかとなりました。

これは、様々な要因(合併症の有無など)で調整した後も関連がみられました。

つまり、血管の周りに脂肪が付着していない人ほど、将来的に歩きが遅くなるリスクは低いという結果が得られました。

血管の脂肪量の増加は動脈硬化の始まり?

ご紹介した報告の結果から、中年期に血管の周りに脂肪がある場合、将来の歩く速さに影響することが示されました。

血管の周りに付着した脂肪は、炎症性サイトカインの分泌を活性化させ、血管の健康を損ねる原因になると筆者らは述べています。将来的には動脈硬化を促進させ、心筋梗塞などの心臓病の原因になるかもしれません。

では、具体的に何をしていけば良いのでしょうか?

残念ながら今回の研究では具体的な対策方法までは追求できていません。動脈硬化や身体機能の衰えを予防していくためには若いうちから適切な食事と運動を続けることが大切です(参考文献・参考資料②)

余分な脂肪を減らしてスマートな生活を続けて行きたいですね。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2019 Apr 12

【筆頭著者】El Khoudary SR

【タイトル】Greater Peri-Aortic Fat Volume at Midlife is Associated with Slower Gait Speed Later in Life in Women: The SWAN Cardiovascular Fat Ancillary Study.

【PMID:30977813


参考文献・参考資料

▼参考文献・参考資料1:The Study of Women’s Health Across the Nation (SWAN) Repository. National Institute on Aging (2019年05月04日閲覧)

▼参考文献・参考資料2:動脈硬化. 国立循環器病研究センター (2019年5月7日閲覧)