筋肉量の減少は男性より女性に顕著?!-アメリカの大規模研究から-

基礎知識
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理学療法士

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【Point 1.】霜降り状態の筋肉は密度が低く筋線維が小さくなるため、体力や筋力の低下を引き起こす

【Point 2.】男性と比較して、女性の方が歳を取るにつれて筋肉の密度が低くなることが分かった

【Point 3.】性差を認めた原因はまだハッキリと分からないが、性ホルモンの影響があるかもしれない

筋肉の密度は「サルコペニア」に関連する重要な要因の1つ

サルコペニアとは、「知っておくと便利な言葉”サルコペニア”ー実はあなたも発症中?ー」でもお伝えしたように、歳をとるにつれて筋肉の量が減少していくことを指す用語です。

この筋肉量の低下には、様々な機序が考えられており、そのうちの1つが筋肉から脂肪に変わってしまう「脂肪変性」があります。

この脂肪変性は「お肉の霜降り」に例えられることが多いです。

以前、「数日間寝っぱなしだと筋肉の質が下がる!?ー健常成人を対象とした検証ー」にて、数日間寝っぱなしだと筋線維が小さくなっていき、筋肉が脂肪に変わりやすい状態になることをご紹介しました。

一般的に、霜降り状態の筋肉は脂肪の量が多いため、密度が低くなります。

一方、赤身のようなしっかりした筋肉は脂肪の量が少ないため、密度が高くなります。

では、歳をとるにつれて筋肉の密度はどのように変化していくのでしょうか?

今回は、この密度の変化に着目して検証した報告をご紹介します。

CT画像から体幹の筋肉の大きさと密度を推定!!

今回の研究は、Framingham Heart Study(参考文献・参考資料1)と呼ばれる、アメリカで行われている大規模研究に参加された方々のうち、40歳から90歳までの250名を対象としました。

この対象者は、10歳ごとに年齢で調整した上で選ばれました。

また、筋肉の大きさと密度(質)は、CT画像を用いて測定しました。

CT画像は筋肉や脂肪、骨などの密度によって、画像の濃淡(白黒の濃さ)が決まります。

つまり、CT画像の色の濃さを測定することで、筋肉や骨などの密度を推定することが出来ると言われています。

この測定方法は、以前お伝えした「サルコペニアの新たな定義と指標!ーヨーロッパからの最新の報告ー」でも述べたように、より有用な治療の選択や治療の効果を判定するのに役立つのではないかと期待されています。

この測定方法を用いて、CT画像から体幹(胸から骨盤、背骨にかけての部位)にある筋肉(腹直筋や脊柱起立筋など)の大きさと密度を測定し、10年ごとの変化量を算出しました。

男性の方が筋肉が大きく密度が高い

解析の結果、男性と女性を比較すると、女性と比較して男性の方が体幹にある筋肉が20〜67%ほど大きく、密度が5〜68%ほど高いことが示されました。

つまり、「元々、男性の方が筋肉質だ」という結果です。ここはご想像通りの結果だと思います。

筋肉の大きさの減少は男女とも同程度

筋肉の大きさに関して10年ごとの変化量を算出した結果、男性と女性のどちらとも、同程度に筋肉の大きさが低下していることが分かりました(男女間で統計学的な差は見られませんでした)。

女性の方が筋肉の密度が低下しやすい!!

続いて、筋肉の密度に関して同様に10年ごとの変化量を算出しました。

その結果、男性と比較して女性の方が、筋肉の密度が低下しやすいことが明らかとなりました。

つまり、男性よりも女性の方が筋肉の状態(質)は低下しやすい可能性が示されました。

なぜ性差を認めたの??

今回ご紹介した報告から、筋肉の大きさは男性と女性では、共に加齢に伴って同じ程度低下していましたが、筋肉の密度は、女性でより低下しやすい可能性がありました。

つまり極端な例で例えるなら、腕や脚の太さが同じ(筋肉の大きさが同じ)見た目の男女が歳を取ると、腕などのあらゆる部位の太さは男女とも同じように低下しますが、筋肉の質に関しては女性の方がより低下しやすい可能性があることが言えます。

では、なぜこのような差が生じたのでしょうか?

残念ながら、今回の報告では性別によって結果に違いが生じた理由は未だハッキリと分かっていません。

おそらく男女でホルモンバランスが異なるため、このような結果に繋がったのではないかと考えられます。

一方で、定期的な運動は筋肉内にある脂肪(霜降り)を減らし、筋肉の質を改善させる可能性があるので、(参考文献・参考資料2)、加齢によって筋肉の質を落とさないためにも、こまめに運動することをオススメします。

筋肉の質を改善する方法やその効果については、今後の研究に期待していきたいですね。


ー紹介文献情報ー

【雑誌名】Osteoporos Int. 2018 Jul;29(7):1569-1580.

【筆頭著者】Johannesdottir F

【タイトル】Population-based study of age- and sex-related differences in muscle density and size in thoracic and lumbar spine: the Framingham study.

【PMID: 29564476