【Point 1.】筋肉の健康指標には、ふくらはぎ周囲径や四肢骨格筋量、握力、歩行速度など様々ある。
【Point 2.】日本を含む3カ国に在住する約3万4千人のデータを集計し、筋肉の健康指標のマッピングに成功した。
【Point 3.】筋肉の健康状態を確認するツールとして活用し、リスクが高い状態かどうかを早めに確認しよう!
日本人やアジア人における筋肉の健康状態
日本人を含むアジア系の民族は、他と比較して小柄で筋肉の量も少ないイメージがあるのではないでしょうか?
この問題は特に高齢者で大きく、日本人を含むアジアの高齢者において、筋肉の健康状態はその後の健康状態に大きく影響します。
一方、筋肉の健康状態も様々あり、筋肉の量や筋力、筋発揮力と、その要素は様々です。
では、アジア人において、筋肉の健康状態はどの程度が標準なのでしょうか?
また、どの段階から筋肉が衰え始め、どの程度低下すると健康状態が脅かされるのでしょうか?
この疑問に対して、2025年02月に Journal of Cachexia, Sarcopenia, and Muscle 誌から、日本人を含む34,265名の筋肉の健康状態をまとめた結果が報告されました。
掲載された報告では、30代から5回椅子立ち上がり動作が低下し、40歳代から筋力の目安である『握力』が低下し、60歳代からふくらはぎの周囲径が減少し始めることが示されました。
また、筋肉量の目安である『四肢骨格筋量』は、男性では50歳代から減少していたものの、女性では80歳代まで安定していることが示されました。
筋肉のパフォーマンスの目安である『歩行速度』は、男性では50歳代から、女性では60歳代から低下し始めることが明らかとなりました。
加えて、各指標が低下かどうかのしきい値(65~69歳における 20パーセンタイルのカットオフ)は次のようになりました。
・ふくらはぎの周囲径:33.0 cm (男性)、31.5 cm (女性)
・四肢骨格筋量(/身長の二乗):7.0 kg/m2 (男性)、5.5 kg/m2 (女性)
・握力:30.4 kg (男性)、18.1 kg (女性)、
・5回立ち座り時間:9.4秒 (男性)、10.0秒 (女性)、
・歩行速度:0.9 m/s
これらのしきい値はいずれも、アジアのサルコペニア診断基準と近似していることがわかると思います。
なお、すべての筋肉の健康指標において、下位5%に位置する人は、上位5%に位置する人と比較して早期に筋力低下が生じることが示されました。
これらのことから、筋肉の健康状態が低下した高リスクな方を特定することが、重要な役割を担っていることが浮き彫りとなったと、筆者らは述べています。
今回の結果をもとに同年代の水準がある程度明確化されましたので、筋肉の健康状態を確認するツールとして活用してみてはいかがでしょうか?
※ 年齢別のグラフなどは、実際の論文をご確認ください。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2025 Feb;16(1):e13731
【筆頭著者】Chen LK
【タイトル】Mapping Normative Muscle Health Metrics Across the Aging Continuum: A Multinational Study Pooling Data From Eight Cohorts in Japan, Malaysia and Taiwan
【PMID: 39971708】