新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、世代を問わず活動量の減少が懸念されています。
緊急事態宣言中の活動量の低下は明らかですが、宣言解除後はどうなのでしょうか。
【Point 1.】緊急事態宣言中に低下してしまった活動量は、宣言解除後速やかにもとに戻すことが望ましい
【Point 2.】日本人中高年者において宣言中に活動量が約30%減り、体力の衰えを感じている方は宣言解除後も活動量が減っていた
【Point 3.】感染症流行前と比べて活動量がずっと減っている中高年は健康に悪影響を及ぼす可能性が高く、対策が必要だろう
あなたはコロナ前と比べて、運動不足になっていませんか?
不要不急の外出自粛が要請されて、1年以上が経過しました。
コロナによって、生活の大部分が変化した方がほとんどだと思います。
医療従事者、高齢者を対象にワクチン接種が開始された一方で、依然として感染は拡大しており3回目の緊急事態宣言が発令されました。
感染拡大を予防するためには3密を回避することは重要ですが、過度な自粛は体力の衰えを引き起こすかもしれません。
そこで、今回は中高年を対象としてコロナ前・緊急事態宣言中・宣言解除後の3時点における活動量を調査した研究をご紹介します。
中高年者(40~69歳)を対象にオンラインでアンケート調査
本記事でご紹介する研究は、我が国における中高年者を対象に、オンラインにてアンケート調査を実施しました。
2020年10月に実施された本調査は、コロナ前、緊急事態宣言中、宣言解除後の3時点における活動量や自覚的な体力の衰えについて調査されています。
具体的には、
■ コロナ前(2019年10月)
■ 緊急事態宣言中(2020年4月)
■ 宣言解除後(2020年10月)
の各時期における活動量を世界中で広く用いられている International Physical Activity Questionnaire (IPAQ) と呼ばれる質問紙法にて調査し、宣言解除後における自覚的な体力の衰えについては、
「外出自粛の影響を受けて身体の衰えを感じますか」という質問に対し、「はい」「いいえ」の2件法で調査しました。
その上で、体力の衰えを感じている方とそうではない方の各時期における活動量の変化についてまとめています。
体力の衰えを自覚している人は、活動量の低下が続いていた
解析対象となったのは40~69歳の中高年1,989名(平均年齢50.1歳、女性38.9%)で、そのうち宣言解除後(2020年10月)の時期に体力の衰えを感じていた方は671名(33.8%)でした。
1,989名の活動量はコロナ前を100%とした場合、緊急事態宣言中は約30%減少しており、宣言解除後においては約15%減少していました。
体力の衰えを感じていた中高年は著しく活動量が低下していた
一方、体力の衰えを感じていた671名においては、同様にコロナ前の活動量を100%とした場合、緊急事態宣言中は約50%減少しており、宣言解除後においては、約25%減少していました。
(図:紹介文献情報をもとに編集部作成)
ウィズコロナ時代においても健康を維持するために積極的な身体活動を
本記事でご紹介した論文の結果から、自覚的な体力の衰えを有している中高年は緊急事態宣言中に著しく活動量が低下し、その後も回復が乏しいことが明らかになりました。
中年期の活動量の低下は、脳血管疾患、認知機能障害など多くの健康問題を引き起こす可能性があります。(参考文献・参考資料①、②)。
また、活動量を高く保っている方は、万が一、コロナウイルスに感染した場合でも重症化のリスクが低いことが示されています。(参考文献・参考資料③)
感染症流行下においては、人が少ない時間帯にウォーキングやジョギングを行ったり、屋内で筋力トレーニングなどを行い、効果的に活動量を増やしていきましょう。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Int J Environ Res Public Health. 2021 Apr 30;18(9):4832.
【筆頭著者】Makizako H
【タイトル】Physical Activity and Perceived Physical Fitness during the COVID-19 Epidemic: A Population of 40- to 69-Year-Olds in Japan
【PMID: 33946548】