【Point 1.】運動には身体を丈夫にする以外にも、様々な効果があると言われている
【Point 2.】28の論文をまとめた結果、定期的な運動は高齢者の運動機能を改善させることが明らかとなった
【Point 3.】買い物や家事なども「運動」の1つと考えて、普段の運動量や運動時間を気にしてみよう
みなさんやみなさんの周りの方は、定期的に運動を行っていますか?
定期的に運動を行うことは身体を丈夫にするだけでなく、気分をラクにさせたりストレスを発散させたりと様々な効果があると言われています。
もしかしたら、この記事を読んでいる方の中には普段から運動をされている方がいるかもしれません。
しかし、その運動がどのようなものでどの程度行えば効果的かご存じでしょうか?
例えば、ウォーキングのような長い時間続けられる運動を「有酸素運動」と呼びます。
一方、重りを持ち上げたりするような、1セットで数回から数十回しか出来ないような運動を「筋トレ」と言います。
医療などの現場では、筋トレをレジスタンストレーニングや抵抗運動と呼ぶこともあります。
今回は、有酸素運動や筋トレを高齢者が行った場合、運動機能にどのような効果があるのか、過去の論文をもとにまとめた結果をご紹介します。
また、最後の方に効果的な有酸素運動や筋トレのポイントをまとめたので運動を行う際の参考にしてみてください。
過去に報告された28の論文の結果を統合
この研究は過去に報告された論文を集め、その結果を元に解析を行う手法を用いました。
まず、8つの医学文献データベースを用いて、1960年から2015年の間に報告された論文を検索しました。
検索の際に、60歳以上の高齢者を対象としている論文、または平均年齢が70歳未満の論文を選択しました。
解析の対象となる方が筋トレや有酸素運動を行っていない論文は除外しました。
なお、この研究では複数の運動機能をまとめて評価できるようなテストを用いた論文を採用しました。
一方で、トイレや家事など生活に必要な能力を評価したものは除きました。
必要な論文を選定した結果、最終的に28の論文が残りました。
定期的な運動は運動機能の改善に効果あり!!
28論文、合計2,608名を対象に解析を行った結果、運動開始前の状態と比較して、運動後は運動機能が良くなることが明らかとなりました。
この結果は、筋トレのみを行った18の研究と、筋トレに有酸素運動を合わせて行った10の研究で差はありませんでした。
今回採用された28の論文の中で、運動を行った期間は112日であり、運動を実施した回数は36回、1回あたりの運動時間は60分でした(値はすべて中央値)。
なお、WHOが推奨している運動時間(参考文献・参考資料1)に達していた研究は、28の研究のうち12件のみでした。
フレイルな人ほど効果が期待できる!
今回ご紹介した報告から、運動を定期的に行うと運動機能が良くなることが示されました。
また、運動機能の改善の程度は、フレイルでない方よりもフレイルな人の方が大きいことが明らかとなりました。
フレイルは「老衰や虚弱を指す言葉「フレイル」-日本における有病率は??-」でもお伝えした通り、日本語では「虚弱、衰弱、老衰、脆弱」と訳されます。
フレイルの概念として「加齢に伴って運動機能が低下しているが、ある程度の回復が期待できる状態」であると考えられています。
運動量や運動時間を考慮してみよう!!
今回の報告から、高齢者が運動を行うと、運動機能が良くなることが明らかとなりました。
また、運動はフレイルな状態にある人にも効果的であり、改善の程度が大きいことが示されました。
なお、今回の報告の限界として、悪い結果は公表されなかった可能性(出版バイアス)があると筆者らは述べています。
つまり、今回の結果は良い方向に偏っている可能性がありますので、結果の過大解釈に注意しましょう。
WHOでは、健康状態を維持・改善するために、運動を行うにあたって次のようなポイントを推奨しています(参考文献・参考資料1)。
- 1週間を通して、有酸素運動を少なくとも150分以上行うこと
- 有酸素運動は、少なくとも10分以上は継続して行うこと
- 更なる健康効果を求める場合は、運動量(※1)を1週間に300分、約5時間は確保すること
- 週に2回は筋トレを含んだ運動を行うこと
※1:ここでいう「運動量」は、家や庭の掃除といった家事なども含んでいます。
一方で、高齢者の中には、上記のような運動を行うのが大変という方もいらっしゃるかと思います。
激しい運動が困難な方々に対してWHOでは、運動する頻度を週3回以上確保し、できる範囲で活動的な運動を行うことを推奨しています。
今回の報告で用いられた過去の研究は、およそ4か月間運動を続けていました。
この結果からも、数か月間は定期的に運動を続けることが効果的である可能性があります。
ご自身の体調や健康状態に合わせて、楽しく続けやすい運動を行ってみましょう。
ー紹介文献情報ー
【雑誌名】J Aging Phys Act. 2017 Jan;25(1):149-170.
【筆頭著者】Chase JD
【タイトル】Physical Activity Intervention Effects on Physical Function Among Community-Dwelling Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis.
【PMID: 27620705】